LF&L株式会社
コラム物流・SCMのリデザイン

積載率はどこまで上げるべきか|輸配送コストが決まる3つの変数

積載率はどこまで上げるべきか|輸配送コストが決まる3つの変数

トラックの荷台に隙間があると、もったいないと感じます。積載率を上げれば運賃は下がるはずだ、という感覚はとても自然です。実際、物流部門の改善テーマとして積載率の向上が真っ先に挙がる会社は多くあります。私自身、荷主側でも輸送側でもこの議論に何度も立ち会ってきました。

ただ、現場を数字で追っていくと、別の姿が見えてきます。積載率は単独で上げると、納期と在庫という別の勘定にツケが回る指標です。そして契約の形によっては、上げた効果が荷主に1円も返らないことがあります。

輸配送コストの決まり方:まず1分だけ

輸配送のコストは、荷物1個あたりで見ると、車両1台を動かす費用をその車が運んだ量で割った形になります。つまり分子が「1台を1日動かす費用」、分母が「その1台が運んだ量」です。運賃を下げたいという話は、突き詰めれば分母を大きくするか、分子を小さくするかのどちらかになります。

分母を大きくする道が3つに分かれます。1回にどれだけ積むか(積載率)、走った距離のうちどれだけが荷を積んだ状態か(実車率)、1日に何回運べるか(回転数)です。この3つは互いに独立ではなく、片方を上げると別の片方が下がる関係にあります。

コストを決める3つの変数を並べて見る

変数

何を測る指標か

上げると何が起きるか

上げすぎたときの副作用

積載率

車両の容積・重量の上限に対して、実際にどれだけ積んでいるか

1回の輸送で運べる量が増え、便数そのものを減らせる

満載になるまで出荷を待つため、リードタイムが延びる。倉庫に出荷待ちの在庫が滞留し、着荷側でも受け入れが大口化する

実車率

総走行距離のうち、荷を積んで走った距離の割合

同じ燃料と同じ拘束時間で運べる量が増える。空車回送が減る

帰り荷を探して待機・迂回が発生し、拘束時間が延びる。相性の悪い荷を無理に載せると品質事故につながる

回転数

1台が1日に何回の配送サイクルを回れるか

車両1台あたりの生産性が上がり、必要な台数が減る

1回あたりの積載は小さくなりやすい。積込・荷降ろしの待ち時間や作業時間が律速になり、時間の制約に当たる

この表で言いたいのは、3つのどれもが正しい指標であり、同時に全部を最大化することはできない、ということです。積載率を上げるためにまとめて出せば回転数は落ちます。回転数を上げるために小刻みに出せば積載率は落ちます。どれを優先するかは、その輸送が何のためにあるかで決まります。

積載率を上げるとき、どこにツケが回るか

積載率を上げる最も簡単な方法は、まとめて出すことです。今日出す予定だった荷物を明日ぶんと一緒にすれば、1台にぎっしり積めます。ここまでは誰でも思いつきます。

問題はその先です。まとめ待ちをした1日は、そのまま納期に上乗せされます。出荷待ちの荷物は倉庫の中で在庫として場所を取り、着荷側では一度に大量に届くぶん置き場と検品の負荷が跳ねます。さらに納期が読みにくくなると、受け取る側は念のための在庫を厚くしますので、サプライチェーン全体で見た在庫はむしろ増えることがあります。

これは在庫の議論とまったく同じ構図です。在庫を減らせば良いとは限らないのと同じで、積載率も高ければ良いとは限りません(在庫は“減らせばいい”わけじゃない)。ひとつの指標を単独で最大化すると、その指標が見ていない場所に必ずしわ寄せが出ます。設備の稼働率は“高ければいい”数字じゃないという話と、骨格は同じです。

ですから積載率を目標に置くときは、必ず対になる指標を並べて見ます。受注から着荷までの日数、出荷待ち在庫の量、着荷側の欠品。この3つが悪化していないことを確認しながらでなければ、積載率の改善は本当の改善だったのかを判定できません。

一段深く:その積載率、誰の利益になっていますか

ここからは契約の話です。同じ「積載率を上げた」という成果でも、運賃の決め方によって、効果が自社に返るかどうかが変わります。

車建て(チャーター)は、1台いくらで車両を借り切る形です。この場合、荷台が半分でも満載でも支払う金額は変わりません。ですから積載率を上げて便数を減らせば、そのぶん台数が減り、支払いが直接下がります。積載率の改善が荷主の財布に返ってくる、わかりやすい形です。

個建て(重量建て・個数建て)は、運んだ重量や個数に応じて支払う形です。この場合、同じ量を運ぶ限り、1台にどう積もうと支払額はほとんど変わりません。積載率を上げて得をするのは主に運送会社側であり、荷主の運賃はそのままというケースが起こります。もちろん、効率が上がったぶんを次回の料金交渉の材料にはできますが、それは自動的に返ってくるものではなく、交渉して初めて返ってくるものです。

私はここを、目的から設計しなおすべき地点だと考えています。積載率は輸送の物理的な効率を測る指標であって、自社の支払いを測る指標ではありません。契約形態を確認せずに積載率だけを目標に掲げると、現場は納期を犠牲にして数字を作り、それでも運賃は下がらない、という結末になりえます。改善に着手する前に、自社の運賃がどの変数で決まっているのかを先に見にいきます。手間のかかる遠回りに見えて、これがいちばん早い道だと感じています。

もうひとつ付け加えると、積載率を上げる余地は自社の出荷の出し方だけでは決まりません。着荷側の受け入れ時間、荷姿や外装の寸法、パレットの規格といった条件が、そもそもの上限を作っています。ドライバーの労働時間の制約が強まっている今、待ち時間の削減や荷役の簡素化が輸送力そのものを左右する局面も増えました(物流2024年問題は“運送会社だけの話”じゃない)。

よくある質問

Q. 積載率の目標値はどれくらいに置けばいいですか。

A. 業界一律の適正値というものはありません。荷姿・車両・配送先の条件で上限そのものが違うためです。他社の数値を借りてくるより、自社の直近の実績を車両別・方面別に並べて、極端に低い便から順に理由を調べるほうが実用的です。目標は全体平均ではなく、改善余地が特定できた便に対して置きます。

Q. 一般に積載率は低いと言われますが、うちも同じでしょうか。

A. 日本の貨物輸送全体では積載効率の低さが課題として指摘されることが多く、空車回送や小口化がその背景として語られます。ただし自社が当てはまるかは実績を見るまでわかりません。軽くてかさばる荷物なら容積が先に埋まり、重い荷物なら重量が先に上限に当たります。どちらの制約で頭打ちになっているかを確認しないと、打ち手を間違えます。

Q. 共同配送は積載率の改善策になりますか。

A. 有効な選択肢のひとつです。1社では満たない荷を持ち寄れば、まとめ待ちをせずに積載率を上げられる可能性があります。ただし出荷時刻・荷姿・納品先の条件を揃える調整が要り、そこが最大のハードルになります。まずは自社内で方面別に出荷を束ねられないかを見てからでも遅くありません。

まとめ

輸配送のコストは、積載率・実車率・回転数という3つの変数で決まります。積載率だけを単独で追うと、まとめ待ちによって納期が延び、在庫が増え、全体としては損をすることがあります。そのうえ契約が個建てなら、上げた効果は自社の運賃に返ってきません。

次に積載率の資料を見るときは、あわせて2つだけ確認してみてください。受注から着荷までの日数が延びていないかと、自社の運賃が車建てか個建てか。この2つを添えるだけで、積載率の数字は意味の違うものに見えてきます。輸配送の設計を一緒に整理したい方はお問い合わせからご相談ください。

この記事を書いた人

小林悠真(こばやし・ゆうま)/LF&L株式会社 代表取締役。九州大学で音響設計・音楽マネジメントを学びデザイン思考を培った後、ヤマトシステム開発・バンテックで物流/生産管理、ラクスル等のITスタートアップで事業開発・SCM構築を経験。製造業・物流業のDXコンサルタントとして、現場の1歩から経営システムまでの全体最適を支援する。テューバ奏者・LFコンサート代表理事も兼務。

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