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コラム物流・SCMのリデザイン

物流2024年問題は“運送会社だけの話”じゃない|サプライチェーンへの影響

物流2024年問題は“運送会社だけの話”じゃない|サプライチェーンへの影響

「2024年問題」と聞くと、まず頭に浮かぶのはトラックとドライバーではないでしょうか。運送会社の労働時間規制の話で、荷物を送る側の製造業や卸売業には関係ない——そう思っていませんか。

物流と生産管理の現場で長く仕事をしてきた立場から言うと、それは半分しか合っていません。規制の対象は確かに運送会社です。でも影響を受けるのは、荷物を運ぶ側だけではありません。むしろ本当に痛むのは、荷主である製造業・卸売業のほうだと私は見ています。

2024年問題とは:まず1分だけ

2024年問題とは、働き方改革関連法により2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の上限が年960時間に規制された結果、輸送能力が構造的に不足する問題を指します。民間シンクタンクの試算では、対策を取らなければ2030年度に輸送能力の3割超が不足する可能性があるとされています。ドライバー不足自体は以前からありましたが、法規制によって「長時間労働で無理やり足りない分を補う」という従来の逃げ道が塞がれた、というのが本質です。

“運送会社の労務問題”という思い込み

ニュースの取り上げ方のせいもあって、2024年問題は運送業界の内部事情、ドライバーの働き方や運送会社の経営の話として語られがちです。じつは、荷主の立場から見ると、これは「これまで運送会社の頑張りに乗っかっていた無理な発注習慣」が通用しなくなるという話です。

私が生産管理・物流の現場にいた頃、当たり前のように見ていた光景があります。夕方に注文が確定し、翌朝一番の便で届けてもらいます。急な仕様変更が入り、出荷直前に積み荷の中身を差し替えます。繁忙期には「とりあえず今日中に運んでほしい」で電話一本、後は運送会社が長時間労働でなんとかしてくれる——そういう調整の余白が、発注側にはずっとありました。この余白が、規制で物理的になくなります。運べる時間の総量が固定される以上、無理な発注は「運んでもらえない」という形で跳ね返ってきます。運送会社の労務問題ではなく、荷主の発注設計の問題なのです。

実際、輸送を依頼しても対応してもらえない「物流クライシス」はすでに一部で顕在化しています。運送会社が案件を選別するようになり、リードタイムが短い・積み下ろしに時間がかかる・荷姿が非効率、といった荷主は後回しにされやすくなります。国の調査でも、営業用トラックの平均積載率は4割程度にとどまるとされています。空気を運んでいる時間が長い荷主ほど、運送会社にとって割に合わない相手になっていきます。これは運賃を上げれば済む話ではなく、選ばれる荷主になれるかどうかという競争の話に変わってきています。

荷主側で見直すべきは在庫と生産計画

では荷主は何をすればいいのでしょうか。運送会社に「なんとかしてほしい」と頼む以外の打ち手は、大きく3つあります。

  • 1. 発注リードタイムを長く取り直す:翌日配送・即日出荷を前提にした発注サイクルを見直し、運送会社が計画的に配車できるだけの猶予を持たせます。ここを詰めるほど、繁忙期に運んでもらえなくなるリスクが上がります。
  • 2. 在庫の持ち方を変える:「必要な時に必要な分だけ運んでもらう」前提が崩れる以上、需要変動の吸収を輸送の柔軟性だけに頼らず、一部は在庫として自社側に持つ設計に戻します。ABC分析で動きの速いA品目だけ安全在庫を厚めにする、といった選別が要ります。
  • 3. 積載効率を上げる:小口・多頻度の配送は運送会社にとって最も敬遠される依頼形態です。共同配送や納品頻度の集約で1台あたりの積載率を上げれば、運送会社にとって「引き受けたい荷主」になれます。

共通しているのは、どれも運送会社の努力ではなく、荷主側の生産計画・発注設計の変更だという点です。私はこれを、輸送を「後工程が勝手に何とかしてくれるブラックボックス」として扱うのをやめ、サプライチェーン全体の設計に輸送の制約を組み込み直す作業だと捉えています。以前、SCM構築のご相談で「発注はシステムが自動で出しているので変えられない」と言われたことがあります。じつは中身を見ると、変えられないのはシステムではなく、翌日配送を前提にした業務フローの方でした。仕組みは、目的が変われば作り直せます。

一段深く:“運んでもらう側”から“運びやすくする側”への設計転換

ここが本題の核です。2024年問題への対応を「運送会社にどう協力してもらうか」という交渉問題として捉えると、打ち手は値上げ交渉くらいしか出てきません。でも目的から設計しなおすと、見え方が変わります。輸送の目的は「モノを届けること」であって、「今の発注習慣を維持すること」ではありません。だとすれば、届け方に合わせて発注や在庫の仕組みを作り直すのが筋です。

私が物流の現場で見てきた失敗の多くは、発注側・製造側・物流側がそれぞれ自分の都合だけを最適化し、その調整コストを一番弱い立場(多くの場合は運送の現場)に押しつけていたことでした。2024年問題は、その押しつけ先が法律で塞がれたことで、初めて「本当は誰が無理をしていたか」が可視化された出来事だと私は見ています。

だからこそ、これは物流部門だけの課題ではなく、生産計画・調達・営業の発注ルールまで含めた、サプライチェーン全体の設計課題です。営業が受注時に約束する納期、製造が組む生産スケジュール、調達が発注する部材のタイミング。この3つが輸送の制約を織り込まずに決まっている限り、いくら物流部門が頑張っても現場は詰まり続けます。運べる前提で組んでいた仕組みを、運べる量が有限だという前提で組み直します。それが2024年問題への本当の向き合い方だと思います。

よくある質問

Q. 2024年問題は運送会社を選べば解決しますか?

A. 運送会社の対応力の差はありますが、それだけでは解決しません。発注リードタイムが短い・積載効率が悪いといった荷主側の発注設計そのものが、どの運送会社にとっても負担になるためです。運送会社選びと並行して、自社の発注・在庫の仕組みを見直す必要があります。

Q. 中小企業でもできる対策はありますか?

A. あります。大掛かりなシステム投資より先に、まず現状の発注サイクルと積載効率を洗い出すことから始められます。「どの品目を」「どのタイミングで」「どれだけまとめて」発注しているかを可視化するだけで、リードタイムを延ばせる余地や共同配送できる相手が見えてくることが多いです。

まとめ

2024年問題は、運送会社だけの話としなくていいと思います。輸送能力が有限になった以上、荷主である製造業・卸売業の側が、発注リードタイム・在庫の持ち方・積載効率という自分たちの設計を見直すことが、最も効く対策です。まずは自社の発注サイクルを一度紙に書き出してみてください。

在庫や生産計画の見直し、サプライチェーン全体の設計については、SCM構築のご支援お問い合わせからお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

小林悠真(こばやし・ゆうま)/LF&L株式会社 代表取締役。九州大学で音響設計・音楽マネジメントを学びデザイン思考を培った後、ヤマトシステム開発・バンテックで物流/生産管理、ラクスル等のITスタートアップで事業開発・SCM構築を経験。製造業・物流業のDXコンサルタントとして、現場の1歩から経営システムまでの全体最適を支援する。テューバ奏者・LFコンサート代表理事も兼務。

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