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部門別採算はどう作るのか|共通費を配って部門ごとの利益を出す5ステップ

部門別採算はどう作るのか|共通費を配って部門ごとの利益を出す5ステップ

部門別の損益を作ってみたら、ある部門が赤字だったとします。ここで「赤字なら縮小しよう」と結論を出すと、会社全体の利益が逆に減ることがあります。原価の仕事に長く関わっていると、この判断の誤りを何度も見かけます。

部門別採算は、共通費を配って部門ごとの利益を出す作業です。5つのステップを順に踏み、最後に「貢献利益」と「配賦後の利益」の両方を見て判断することが、いちばん大事な点です。

部門別採算とは:まず1分だけ

部門別採算とは、事業部や店舗、製品群といった「部門」ごとに、売上から費用を引いて利益を出し、どの部門がどれだけ稼いでいるかを見る仕組みです。全社の損益計算書だけでは見えない、部門ごとの稼ぐ力と、お金の使われ方を確かめられます。

費用の中には、部門に直接ひもづけられるもの(直接費)と、全社でまとめて発生するもの(共通費)があります。直接費は各部門に集計し、共通費は何らかの基準で配ります。この配る作業を「配賦」と呼びます。

利益の段階にも名前があります。売上高から変動費を引いたものが限界利益で、そこから部門に直接ひもづく固定費(個別固定費)まで引いたものを、本稿では貢献利益と呼びます。教科書や会社によっては、限界利益のほうを貢献利益と呼ぶこともあるので、社内で呼び方を揃えてください。

部門別採算を作る5ステップ

ステップ

やること

決めること・出すもの

1. 部門を決める

利益の責任を持つ単位で区切る

部門の一覧と責任者

2. 直接費を集める

各部門に直接ひもづく費用を集計する

部門ごとの直接費(変動費と個別固定費)

3. 共通費を配賦する

配賦基準を決めて、共通費を各部門に配る

基準と配賦額

4. 部門損益表を作る

貢献利益と配賦後の利益を並べる

部門別損益表

5. 判断に使う

赤字の理由を分けて、打ち手を決める

改善・継続・撤退の判断

ステップ1と2:部門を決め、直接費を集める

最初に決めるのは、部門の区切りです。予算や人員を自分で動かせる単位でなければ、部門別の利益に責任を持てません。区切りが細かすぎると、配賦の作業ばかり増えるので、まずは大きな単位から始めてください。

次に、各部門に直接ひもづく費用を集めます。その部門でしか使っていない材料費、担当者の人件費、専用の設備の減価償却費などです。ここでの鉄則は、迷ったら共通費に回すのではなく、直接ひもづけられるかを先に確かめることです。直接費にできるものが多いほど、配賦の影響が小さくなり、数字の説得力が上がります。集めるときは、売上に比例して増える変動費と、部門の固定費(個別固定費)に分けておくと、あとで限界利益と貢献利益の両方が出せます。

ステップ3:共通費を配賦する

家賃、経理や総務の人件費、全社のシステム費用などは、部門に直接ひもづきません。これを配賦基準で割り振ります。基準には、売上高、人数、床面積、作業時間、機械時間などが使われます。

どの基準を使うかで、部門の利益は変わります。基準の選び方は、費用が発生する原因に近いものを選ぶのが原則で、詳しくは配賦基準は何で決めればいいのかで整理しています。配賦そのものに「正解」はなく、関係者が納得できる基準を決めることが目的です。この考え方は間接費の配賦は“正確に配る”ことじゃないにも書かれています。

ステップ4:部門損益表を作る(架空の例)

次の数字は、計算の流れを見るための架空の例です。部門A・B・Cの3つがあり、全社の共通費が1,800万円とします。共通費は、売上高の比率で配ります。

(単位:万円)

部門A

部門B

部門C

合計

売上高

5,000

3,000

2,000

10,000

変動費

2,500

1,400

1,300

5,200

限界利益(売上高-変動費)

2,500

1,600

700

4,800

個別固定費(部門に直接ひもづく固定費)

700

500

500

1,700

貢献利益(限界利益-個別固定費)

1,800

1,100

200

3,100

共通費の配賦(売上比で配る)

900

540

360

1,800

配賦後の利益

900

560

-160

1,300

共通費1,800万円を売上比(5:3:2)で配ると、Aに900万円、Bに540万円、Cに360万円になります。配賦後の利益は、Aが900万円、Bが560万円、Cがマイナス160万円です。Cだけが赤字に見えます。

ステップ5:貢献利益で、判断する

ここで、Cを撤退したらどうなるかを計算します。Cが生んでいた貢献利益200万円は消えますが、共通費1,800万円は、Cがなくなっても全額残ります。全社の利益は、3,100万円から200万円を引いた2,900万円から、共通費1,800万円を引いた1,100万円になり、現状の1,300万円より200万円減ります。なお、この計算は、Cの個別固定費500万円が撤退で全額なくなる前提です。専用設備の減価償却のように撤退しても残る費用があれば、その分だけ撤退の損はさらに大きくなります。

つまり、配賦後は赤字でも、貢献利益がプラスの部門は、共通費の一部をまかなって全社の利益に貢献しています。撤退して共通費が同じだけ減るならよいのですが、減らない共通費は、残った部門に重くのしかかります。判断の物差しは、配賦後の利益ではなく、まず貢献利益です。

ただし、貢献利益が小さい部門を放置してよいという意味ではありません。共通費を配ったあとの数字を見て、その部門が将来、貢献利益を伸ばせるのか、資源(人員や設備)を別の部門に振り向けたほうがよいのかを検討します。製品単位で赤字を探す視点は赤字商品はどうやって見つけるのかが詳しいので、部門と製品の両方で見ると判断が立体的になります。

一段深く:配賦後の赤字は、現場への評価ではありません

部門別の数字を出すと、必ず「うちの部門が足を引っ張っているのか」という反応が出ます。配賦基準を変えれば数字が変わるのですから、配賦後の利益で部門や担当者を評価すると、現場が納得しません。評価は、その部門が自分で動かせる範囲(売上、直接費、貢献利益)に限るのが原則です。

もう1つ、基準を決めるときに大切なのは、数字を変える目的で基準を選ばないことです。「この基準だとA部門が赤字になるから別の基準に」と、結果から逆算すると、仕組みの信頼が失われます。基準は費用が発生する原因から決め、変えるのは事業の実態が変わったときだけにします。

見えない間接費をどう扱うかは見えない原価(間接費)はどう扱えばいいのかで整理されています。配賦する前に決めることを確認してから、部門別採算に進むと、手戻りが減ります。

よくある質問

Q. 小さな会社でも、部門別採算は必要ですか。

A. 事業や商品の系統が複数あるなら、有用です。部門と呼べるほどの組織がなくても、事業単位、店舗単位、顧客層単位で作れます。まず1つの単位で作って、判断に使えるかを確かめてから広げてください。

Q. 共通費はすべて配賦しないといけませんか。

A. 配賦しない運用もあります。貢献利益までで部門を見て、共通費は全社でまとめて見る方法です。配賦すると数字は精密に見えますが、基準の恣意性が入ります。目的が部門の稼ぐ力を見ることなら、貢献利益までで十分なことも多いです。

Q. 直接費と共通費の境目は、どう決めますか。

A. その部門がなくなったときに、なくなる費用かどうかで考えます。なくなるなら直接費、残るなら共通費です。迷うものは、一度ルールを決めて、毎期同じ扱いにしてください。

まとめ

部門別採算は、部門を決め、直接費を集め、共通費を配賦し、部門損益表を作り、判断に使う5つのステップで作ります。判断では、配賦後の利益だけを見ず、貢献利益と並べて、共通費が残る前提で考えることが重要です。基準は原因に近いものを選び、評価には使わず、意思決定の材料として使ってください。

自社の部門別損益の作り方や、配賦基準の設計でお困りの方は、お問い合わせからお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

小林悠真(こばやし・ゆうま)/LF&L株式会社 代表取締役。九州大学で音響設計・音楽マネジメントを学びデザイン思考を培った後、ヤマトシステム開発・バンテックで物流/生産管理、ラクスル等のITスタートアップで事業開発・SCM構築を経験。製造業・物流業のDXコンサルタントとして、現場の1歩から経営システムまでの全体最適を支援する。テューバ奏者・LFコンサート代表理事も兼務。

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