LF&L株式会社
コラム製造現場のリデザイン

稼働率と可動率は何が違うのか|同じ「動いた割合」なのに片方は100%を目指さない理由

稼働率と可動率は何が違うのか|同じ「動いた割合」なのに片方は100%を目指さない理由

工場の会議で並ぶ「稼働率90%」と「可動率98%」は、どちらも「どれだけ動いたか」の数字に見えますが、見ているものが違います。稼働率は「設備の能力に対して、どれだけ動かして作ったか」、可動率は「動かしたいときに、どれだけ動かせたか」で、可動率は100%に近づけるほどよい数字ですが、稼働率は100%を目指すと作りすぎにつながります。

同じものを別の言葉で言っているのだと思いがちですが、目指す方向が違います。その理由を、定義と架空の数字で順に見ていきます。

稼働率と可動率の違い:まず1分だけ

稼働率は、設備の能力のうち、実際に動かして生産した割合です。たとえば1日に100個作れる設備で80個作れば、稼働率は80%です。この数字は、受注の量に左右されます。注文が少なければ、設備が万全でも下がります。

可動率は、動かしたいと思ったときに、いつでも動かせる状態だった時間の割合です。式は「(負荷時間-停止時間)÷負荷時間」で、負荷時間は動かす予定だった時間を指します。設備の故障や段取りなどで止まった時間が増えるほど下がり、受注の量には左右されません。

なお、この2つの言葉の定義は、文献や会社によって揺れます。ここでは、上のように区別して使う立場で書きます。読み方も、稼働率を「かどうりつ」、可動率を「べきどうりつ」と読んで区別する資料があります。

並べて比べる

比べる点

稼働率

可動率

見ているもの

能力に対して、実際に作った割合

動かしたいときに、動かせた割合

分母になるもの

設備の能力(作れる量・使える時間)

動かす予定だった時間(負荷時間)

下がる主な原因

注文が足りない、計画が少ない

故障、チョコ停、材料待ち

責任を持つ部門

営業・生産計画

保全・製造

目指す値

需要に合わせる(100%が目標ではない)

限りなく100%に近づける

この表のうち、いちばん大事なのは最後の行です。同じ「動いた割合」の仲間に見えて、目指す方向が違います。可動率は設備の信頼性そのものなので、高いほど計画どおりに作れます。稼働率は、需要を超えて上げても意味がありません。

架空の数字で、稼働率の落とし穴を見る

次の例は架空です。1日に100個作れる設備があり、平日の需要は1日80個とします。稼働率は80%で、設備に問題はありません。

ここで、「設備が遊んでいる、稼働率を上げてほしい」と指示が出たとします。現場が指示に応じて1日100個作ると、毎日20個ずつ、使い道のない製品ができます。5日で100個、20日で400個の在庫です。稼働率は100%になりましたが、会社は在庫を抱えて資金が寝るだけで、売上は1個も増えていません。

作りすぎは、製造の7つのムダの1つに数えられます。止めないことが目的になると、このムダを自分で作ってしまいます。稼働率と在庫の関係は稼働率は“高ければいい”数字じゃないでも扱っています。

稼働率と可動率の組み合わせで、原因を読み分ける

2つの数字を同時に見ると、原因の探し先が分かれます。

稼働率

可動率

起きていること

先に見る場所

低い

高い

設備は万全だが、仕事が足りない

受注・生産計画・設備の持ち方

低い

低い

止まってもいるし、仕事も少ない

まず可動率(停止の中身)

高い

低い

止まりがちなのを、残業などで埋めている場合がある

停止の原因と保全

高い

高い

順調だが、需要を超えて作っていないか

完成品の在庫の増え方

稼働率だけを見ていると、1行目と2行目の区別がつきません。1行目は設備に手を入れても何も変わらず、営業と計画の問題です。2行目の停止は、段取り替えや故障など、中身を分けて見ないと打ち手が決まりません。段取りに由来する停止の短縮は段取り替えの時間はどう縮めるのかで扱っています。

一段深く:生産量は「必要数から逆算」し、保全は別の物差しで測る

稼働率と可動率を混ぜると、2つの別々の仕事がごちゃ混ぜになります。1つは、必要な量を、必要な時期に作る計画の仕事です。もう1つは、動かしたいときに動く設備を保つ保全の仕事です。前者の物差しは需要への合致で、後者の物差しは可動率です。

現場の指示が「稼働率を上げろ」だけになると、計画の仕事が保全の物差しで測られてしまい、作りすぎが起きます。逆に、計画の都合で設備を酷使すると、保全の仕事が追いつかず、可動率が下がります。だから、必要数から逆算して作る量を決める仕組みと、停止を減らす活動は、別々に持つのが安全です。必要数から作る量を決める進め方は生産計画はどう立てるのかにあります。

可動率の停止時間は、故障、段取り、材料待ちなどの中身に分けて記録してください。中身を分けないまま可動率の数字だけ追うと、手を打つ場所が決まらず、数字が横ばいのままになります。

よくある質問

Q. 稼働率が低いのは、悪いことですか。

A. 注文が少ないために下がっているだけなら、設備の問題ではありません。ただし、低い状態が続くなら、設備の固定費を支える仕事が足りていないということなので、設備の持ち方や受注を見直す材料になります。

Q. 可動率が100%を超えることはありますか。

A. 式では、負荷時間より多く動くことはないので、100%が上限です。実際には、短い停止が積み重なって、数字が100%に届かないのが普通です。

Q. 社内の資料では、2つの言葉を区別していません。どうしたらよいですか。

A. 言葉を直す前に、それぞれの計算式を資料に書いて、分母と分子を揃えてください。呼び方より、何を測った数字かが共通になっていることが大切です。

まとめ

稼働率は、能力に対して実際にどれだけ作ったかを見る数字で、需要に合わせるものです。可動率は、動かしたいときに動かせたかを見る数字で、100%に近づけるものです。次に「稼働率を上げよう」という話が出たときは、需要が足りているのか、設備が止まっているのかを、まず切り分けてみてください。

生産計画と保全の指標を分けて持つ仕組みづくりを整理したい方は、お問い合わせからお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

小林悠真(こばやし・ゆうま)/LF&L株式会社 代表取締役。九州大学で音響設計・音楽マネジメントを学びデザイン思考を培った後、ヤマトシステム開発・バンテックで物流/生産管理、ラクスル等のITスタートアップで事業開発・SCM構築を経験。製造業・物流業のDXコンサルタントとして、現場の1歩から経営システムまでの全体最適を支援する。テューバ奏者・LFコンサート代表理事も兼務。

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