生産計画はどう立てるのか|順番を決める5つのステップ

朝礼で今週の生産計画表を配ったばかりなのに、昼過ぎにはもう赤字の書き込みだらけです。営業から「明日までに」と割り込みが入り、設備が1台止まり、パートさんが一人休みます。夕方には、誰の目にも元の順番とは別物になっている——そんな光景に、心当たりはありませんか。
物流と生産管理の現場を経て、いま中小製造業のDXを支援する立場から見ると、崩れる計画には共通の型があります。多くの現場で実際に決めているのは「順番」だけで、その順番を支えるはずの能力(人と設備がどれだけ空いているか)を見ていません。だから計画は、崩れるべくして崩れます。
生産計画とは:まず1分だけ
生産計画とは、受注や需要をもとに「いつ・何を・どれだけ作るか」を決め、工程ごとの順番に落とし込む作業です。日程表そのものを作ることが目的ではなく、限られた人と設備をどの順番で使うかという、配分の設計です。配分を誤ると、忙しいはずの工程で手待ちが起き、逆に余裕があるはずの工程が残業する、という矛盾が起きます。
順番を決める5つのステップ
順番は勘や声の大きさで決めるものではありません。次の5つを、この順番で通します。
ステップ1:確定受注と見込みを分ける
まず、確実に売れる「確定受注」と、まだ確定していない「見込み」を分けます。この二つを混ぜたまま計画を組むと、見込みのために材料や設備が先に押さえられ、実際に注文が来たときに作れない、という本末転倒が起きます。
ここを飛ばすと:見込みで先に押さえた枠が、確定受注の納期を圧迫します。現場は「なぜ確定の注文が後回しになるのか」を説明できないまま、値引きや休日出勤で帳尻を合わせる羽目になります。
ステップ2:必要な工程を洗う
次に、その製品がどの工程を、どの順番で通るかを洗い出します。切削、溶接、塗装、検査。当たり前に見えて、実際には特定の担当者の頭の中にしかない現場が少なくありません。
ここを飛ばすと:工程の並びが人に依存したままになります。属人化がいけない、という話の以前に、計画そのものを組める人が社内に1人しかいない状態そのものが、事業のリスクです。
ステップ3:能力を数える
ここが最も見落とされる工程です。人が何人、何時間動けるか。設備が何台、何時間稼働できるか。
休暇や保全、段取り替えの時間を差し引いた「実際に使える時間」を、数字にします。1日8時間動く設備でも、段取り替えと保全で1時間半取られるなら、実際に使えるのは6時間半です。この差を見ずに8時間分の仕事を積んでしまう現場は、珍しくありません。
ここを飛ばすと:紙の上では収まっているのに、現場では収まらない計画ができます。受注量だけを見て組んだ計画は、能力という制約条件を持たないので、最初から実行不能を織り込んでいるのと同じです。
ステップ4:制約工程に合わせて並べる
すべての工程を同じ重さで扱うと、計画は必ずどこかで詰まります。工程の中でいちばん能力が小さい一つ、制約工程(ボトルネック)を見つけ、他の工程はそこに合わせて並べます。
ここを飛ばすと:制約工程の手前に仕掛品が山になり、後工程は逆に手待ちになります。全工程を均等に頑張らせるほど、全体の産出量はむしろ制約工程の能力を超えられなくなります。
ステップ5:崩れたときの入れ替えルールを決める
最後に、計画どおりに進まなかったとき「誰が」「どの基準で」順番を組み替えるかを、あらかじめ決めておきます。納期の近い順を優先するのか、段取り替えの少ない順を優先するのか、取引先ごとの優先度を先に決めておくのか。基準は会社によって違って構いません。決まっていることが大事です。
ここを飛ばすと:崩れるたびに、その場にいる人の裁量(多くは声の大きい人の判断)で順番が組み替えられます。同じ状況でも日によって違う答えが出て、計画そのものへの信頼が失われていきます。
崩れる前提で作る
ここまでの5つを丁寧にやっても、計画は崩れます。突発の欠勤、設備の故障、取引先都合の変更——現場で計画どおりに進む日のほうが、実は少ないはずです。生産計画の目的は「崩れない計画を作る」ことではなく、崩れても立て直せる状態を作ることだと、私は捉えています。
立て直しやすさを支える道具の一つが、在庫の持たせ方です。制約工程の手前に少しだけ仕掛品を置く、主要部材だけ安全在庫の決め方を先に決めておきます。こうした“遊び”は無駄ではなく、崩れたときに全体を止めないための保険です。在庫はゼロが理想、という発想とは、ここで一度距離を置く必要があります。
予測をどれだけ精緻にしても、計画は「当たる前提」で組んだ瞬間に脆くなります。むしろ最初から「外れる前提」で、崩れた後の動き方まで計画に含めておきます。そのほうが、結果として崩れにくい計画になります。
一段深く:精度より、差し替えのルール
ここでもう一度整理すると、計画が崩れるのは予測が外れたからではありません。予測は、どれだけ丁寧にやっても外れます。本当の問題は、崩れたときに「誰が」「どういう基準で」並べ直すかが決まっていないことです。
計画の精度を上げようとする努力は、たいてい報われません。外部要因まで読み切ることはできないからです。一方、差し替えのルールは社内だけで決められます。
精度より、差し替えのルールの有無のほうが、現場の混乱を分けている——これが私の見立てです。ルールがある現場は、崩れても数分で立て直します。ルールがない現場は、崩れるたびに会議室に人が集まります。
設計の視点で言えば、計画を「当てるための道具」として作るか、「外れても機能し続ける仕組み」として作るかの違いです。狙いをどちらに置くかで、現場が消耗する回数はまったく変わってきます。
この見立ては、原価の考え方にも通じます。原価も、細かく計算するほど正しくなるわけではありません。原価の見える化は“細かく計算する”ことじゃないで書いたとおり、大事なのは精度ではなく、どこで何が起きているかが見えている状態です。生産計画も同じで、狙うべきは完璧な予測ではなく、崩れた瞬間に何を見て、誰が動くかが決まっている状態です。
よくある質問
Q. 生産計画は、どのくらいの頻度で見直すべきですか?
A. 受注の変動が大きい工程ほど、見直しの間隔は短くなります。確定受注の比率が高い工程は週次、季節変動の大きい工程は月次というように、工程ごとに間隔を変えるのが現実的です。全社一律の頻度にこだわる必要はありません。
Q. Excelで生産計画を管理していますが、いつシステム化を検討すべきですか?
A. Excelそのものが悪いわけではありません。判断材料は中小製造業の生産管理|Excelの限界はどこで来るのかにまとめましたが、目安は「特定の担当者しか計画を触れない」「更新が現場のスピードに追いつかない」が常態化した時点です。
まとめ
生産計画は、順番だけを決める作業ではありません。確定受注と見込みを分け、工程を洗い、能力を数え、制約工程に合わせて並べ、崩れたときの入れ替えルールを決めます。この5つがそろって、初めて「使える計画」になります。
全部を一度に整えなくても構いません。まずはステップ1と5(確定受注の切り分けと、崩れたときのルール)から始めてみてください。ここだけでも、朝の計画表が夕方に別物になる頻度は、確実に減っていきます。生産計画の見直しについては、お問い合わせからご相談いただけます。
この記事を書いた人
小林悠真(こばやし・ゆうま)/LF&L株式会社 代表取締役。九州大学で音響設計・音楽マネジメントを学びデザイン思考を培った後、ヤマトシステム開発・バンテックで物流/生産管理、ラクスル等のITスタートアップで事業開発・SCM構築を経験。製造業・物流業のDXコンサルタントとして、現場の1歩から経営システムまでの全体最適を支援する。テューバ奏者・LFコンサート代表理事も兼務。