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コラム製造現場のリデザイン

段取り替えの時間はどう縮めるのか|内段取りを外に出す4手順

段取り替えの時間はどう縮めるのか|内段取りを外に出す4手順

「段取り替えをもっと速く」と言われて、作業者に急いでもらったのに、思ったほど時間が縮まらなかった経験はありませんか。ストップウォッチで測っても、道具を新しくしても、翌月も同じ数字に戻っている——製造業の現場でよく聞く悩みです。設備を止めた瞬間から作業者が工具を探して歩き回り、前工程の部材が届くのを待つ、という時間も、段取りの時間として数えられています。

物流・生産管理の現場でSCM構築や工程改善に携わってきた立場から見ると、この停滞にはだいたい共通の原因があります。道具や作業者の腕前を先に疑ってしまい、段取りそのものの中身を分けて見ていない、という点です。速くする前に、外せる作業を見極める順番があります。

段取り替えとは:まず1分だけ

段取り替えとは、ある製品の生産から次の製品の生産へ切り替えるために行う、設備の停止・調整・試し運転などの一連の作業です。この作業は大きく2種類に分かれます。設備を止めないとできない内段取りと、設備を動かしたままでもできる外段取りです。段取り替えの時間短縮を目指す考え方はSMED(シングル段取り=段取り替えをできる限り短くする手法)と呼ばれ、核になるのは内段取りを外段取りへ移すことにあります。もともとは金型の交換を短時間で行うために整理された考え方ですが、業種を問わず段取り替え全般に応用できます。

段取り時間を縮める4つの手順

私が現場で段取り改善に入るときは、必ずこの順番で進めます。道具の改良から入ると、直すべき場所を見落としたまま費用だけがかさみます。

1. 現状の段取りを全部書き出す

最初にやることは、時間を測ることではありません。段取り替えの最初から最後まで、行っている動作をひとつ残らず紙に書き出すことです。中小製造業の生産管理を見ていると、この工程の中身が担当者の頭の中にしかなく、誰も書き出したことがない、という状態が少なくありません。書き出して初めて、「工具を探している」「前工程を待っている」といった、作業以外の時間が見えてきます。

書き出す粒度は細かいほど良いです。「工具箱を取りに行く」「型を外す」「新しい型をはめる」「試し運転をする」というように、一つひとつの動作を分けて紙に並べてください。まとめて書くと、後の仕分けで動作同士が絡み合ったまま残り、どこを外に出せるかが見えなくなります。

2. 内段取りと外段取りに仕分ける

書き出した動作をひとつずつ、「設備を止めないとできないか」で問い直します。判断に迷う動作は、いったん内段取り側に置いておいて構いません。ここで大切なのは仕分けの精度より、全部の動作に目を通すことです。

この段階では、思い込みで内段取りに分類していた作業が、実は外に出せると気づくことがよく起きます。「治具の調整」も、事前に仮組みしておけば、設備を止めてからの作業は取り付けだけで済む場合があります。仕分けは一度で終わらせず、迷った項目だけ後でもう一度見直す、くらいの気持ちで進めてください。

3. 外に出せるものを外に出す

内段取りに分類した動作のうち、事前に済ませられるものを、設備を止める前の時間に移します。次の型や治具の用意、図面の確認、部材の運搬——移せる動作は、想像以上に多く見つかります。ECRSの原則でいう「交換」に近い発想で、作業の中身を変えずに、行うタイミングだけを前に動かします。

特に多いのが、工具や部材を探すために設備の周りを歩き回っている時間です。定位置を決めて段取り替え専用のワゴンにまとめ、前工程が終わる前に設備の脇へ運んでおくだけで、この時間はまるごと外段取りに移せます。移した動作の分だけ、設備を止めている時間は短くなります。

4. 残った内段取りを短くする

外に出しきった後、それでも設備を止めないとできない作業だけが残ります。ここで初めて、締結をレバー式のクランプに替えてワンタッチ化する、位置決めにピンやストッパーを使って調整そのものをなくす、複数人で同時に作業して所要時間を分け合う、といった短縮策を検討します。この段階を最初に始めると、外に出せば消えるはずだった時間まで、高い費用をかけて縮めようとしてしまいます。

内段取りと外段取りの仕分け例

作業

内か外か

外に出す方法

次工程の型・治具を探す

段取り開始前に置き場から出し、設備の脇に置いておく

図面・作業指示書を確認する

前工程が終わる前に読み、疑問点を先に解消しておく

工具・計測器を取りに行く

定位置を決め、段取り替え専用のワゴンにまとめておく

材料・部材を運ぶ

前工程の完了を待たず、台車に積んで待機させておく

試し運転で寸法を確認する

内のまま残る

外には出せないが、基準治具を使えば所要時間を縮められる

よくある失敗:道具の改良から始めてしまう

段取り改善の相談で最も多い順番の間違いが、いきなり4番目の「短くする」から着手することです。専用治具を発注し、最新の工具を導入して、内段取りそのものを速くしようとします。この順番に入っていないかは、治具を発注する前に「対象の動作を紙に書き出したか」で見分けられます。

書き出さないまま着手すると、治具の対象範囲そのものが膨らみます。本来は工具に頼らなくても外へ移せた動作まで、なんとなく「内段取りだから」という理由で治具の対象に含めてしまい、発注する治具の仕様も大きく複雑なものになりがちです。仕様が複雑になれば見積もりも上がり、投資額と、実際に短縮できた時間の釣り合いが取れなくなります。書き出しと仕分けを飛ばさないことが、対象範囲を膨らませない一番の近道です。

一段深く:時間を測ると、作業より“待ち”と“探す”が長い

デザイン思考の基本は、目の前の作業をそのまま前提にせず、まず何にどれだけ時間を使っているかを構造で見ることです。製造現場の支援でこの見方を当てはめてみると、段取り替えの時間のうち、作業そのものより大きな比重を占めているのは、たいてい二つの時間だという構図が見えてきます。ひとつは前の工程が終わるのを待っている時間、もうひとつは必要な工具や部材を探している時間です。

この見立てに立つと、最初の一手は道具の改良ではなくなります。まず決めるべきは、工具や部材の置き場所と、何にいつ着手するかのタイミングです。技能伝承の話とも重なりますが、段取りの速さをベテランの腕前だけに頼っていると、この“待ち”と“探す”の時間はいつまでも見えないままです。仕組みとして置き場所とタイミングを決めておけば、誰が担当しても同じ速さに近づきます。

よくある質問

Q. SMEDと段取り替えの時間短縮は同じもの?

A. SMEDは段取り替えの時間短縮を目指す考え方の名称で、内段取りを外段取りに移すことを中心に据えています。この記事で紹介した4つの手順は、その考え方を実務の順番に落としたものです。

Q. まず道具から改良してはいけない?

A. 順番の問題です。理由は本文の「4. 残った内段取りを短くする」で触れたとおりで、書き出し・仕分け・外出しを済ませてから道具を検討すると、投資は本当に外へ移せなかった動作だけに向きます。道具の改良自体を否定しているわけではないので、外に出せるものを出しきった後に検討してください。

まとめ

段取り替えの時間短縮は、道具の改良からではなく、現状を書き出し、内段取りと外段取りに仕分け、外に出せるものを出し、それでも残った内段取りを短くする、という順番で進めると効果が出やすくなります。順番を守るだけで、投資が無駄にならず、担当者が変わっても再現できる速さになります。全部を一度に変える必要はありません。まずは段取り替えの一部始終を紙に書き出すところから始めてみてください。工程改善や生産管理の見直しについては、お問い合わせからご相談いただけます。

この記事を書いた人

小林悠真(こばやし・ゆうま)/LF&L株式会社 代表取締役。九州大学で音響設計・音楽マネジメントを学びデザイン思考を培った後、ヤマトシステム開発・バンテックで物流/生産管理、ラクスル等のITスタートアップで事業開発・SCM構築を経験。製造業・物流業のDXコンサルタントとして、現場の1歩から経営システムまでの全体最適を支援する。テューバ奏者・LFコンサート代表理事も兼務。

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