LF&L株式会社
コラム物流・SCMのリデザイン

過剰在庫はどう減らすのか|滞留在庫を見つけて出口を決める5ステップ

過剰在庫はどう減らすのか|滞留在庫を見つけて出口を決める5ステップ

過剰在庫を減らすと決めると、まず思いつくのは「発注を止める」ことです。けれども、すでに倉庫にある在庫は、発注を止めただけでは減りません。動かない在庫は、動かないまま棚に残ります。

過剰在庫は、滞留している在庫を見つけ、原因を分け、出口を決め、判断のルールを作ってから、最後に入り口を止めます。この5ステップで減らせます。出口は、転用、返品、値引き販売、廃棄の4種類で、どれを選ぶかを決める人と期限を先に決めておくことが、実際に減らすための条件です。

過剰在庫を減らす5ステップ

ステップ

やること

成果物

1. 滞留在庫を見つける

最後に出庫した日からの経過で在庫を区分する

滞留在庫の一覧と金額

2. 原因ごとに分ける

発注の過多、仕様変更、キャンセル、予測外れなどに分類する

原因別の内訳

3. 出口を決める

転用・返品・値引き販売・廃棄から、品目ごとに選ぶ

品目別の出口の案

4. 判断のルールを決める

誰が、いつまでに、いくらまでを決めるかを定める

処分判断の基準と担当

5. 入り口を止める

同じ在庫が溜まらないよう、発注の仕組みを直す

発注点・発注量の見直し

順番が肝心です。ステップ5から始めて発注だけを締めると、すでにある在庫の山は残ったままで、欠品のリスクだけが上がります。先に出口を作ってから、入り口を絞ってください。

ステップ1:滞留在庫を見つける

最初の作業は、在庫を最後に出庫した日からの経過で区分することです。現在の在庫数が多い品目ではなく、動いていない品目を探します。次の表は、架空の例です。在庫の総額が5,000万円、品目数が1,000の会社を想定しています。

最後の出庫からの経過

品目数

在庫金額(万円)

全体に占める割合

3か月以内

700

3,600

72%

3〜6か月

150

700

14%

6〜12か月

100

400

8%

12か月超

50

300

6%

この例では、6か月以上動いていない在庫が700万円、全体の14%あります。品目数では15%にあたる150品目です。何か月を滞留とみなすかに決まりはなく、業種や商品の寿命で変わります。会社として基準を決めて、毎月同じ物差しで測ってください。

ステップ2:原因ごとに分ける

滞留在庫は、溜まった原因で出口が変わります。大きくは、発注が多すぎた、予測が外れた、仕様変更や製品の切り替えで不要になった、注文がキャンセルされた、といった分類になります。原因ごとに、返品の可能性や転用の余地が違うからです。

たとえば、仕様変更で使えなくなった部品は、他の製品に転用できないかを真っ先に探します。発注が多すぎただけの汎用品は、仕入先に返品できる可能性があります。一方、シーズンが終わった商品は、時間がたつほど価値が下がるので、早く決める必要があります。

ステップ3:出口を決める

出口は4種類です。どれを選ぶかは、その在庫でいくら回収できるかと、手間のかかり方で決まります。

出口

向く在庫

回収できるもの

注意

転用

他の製品や用途でも使える部品・材料

ほぼ全額(使う分だけ)

転用先の品質基準や仕様に合うかの確認

返品

汎用品、取引条件で返品が認められているもの

仕入値に近い額(条件による)

取引条件で決まり、期限や手数料がある場合がある。委託取引で相手が中小事業者の場合、自社都合の返品は中小受託取引適正化法(旧下請法・2026年1月施行)で禁じられていることがあるので、取引条件と併せて専門家に確認する

値引き販売

まだ商品価値がある在庫

値引き後の売値

通常の販売ルートの価格を崩さない売り方にする

廃棄

価値がなく、他の出口が使えない在庫

なし(保管費や場所の解放)

会計上の処理を事前に確認

廃棄を最後に置くのは、金額が最も大きく失われるからです。ただし、価値のない在庫を持ち続けることにも、保管の場所代と管理の手間がかかります。出口が見つからないまま持ち続けるより、期限を決めて処分したほうが、会社全体では得になる場合があります。

ステップ4:判断のルールを決める

在庫の出口で最も詰まりやすいのは、処分を判断する人が決まっていないことです。倉庫の担当者は、勝手に捨てられません。購買が返品の可否を営業に確認し、営業が経理の評価への影響を気にして、結論が出ないまま月が過ぎる、という形になりやすいのです。滞留在庫は、判断が先送りされるほど積み上がります。

決めておくのは、3点です。誰が最終判断をするか、滞留と判定してから何か月で出口を決めるか、金額がいくらまでなら現場の判断で動けるか。この3点があれば、毎月の会議で、品目を1つずつ審議せずに済みます。

ステップ5:入り口を止める

最後に、同じ在庫が溜まらない仕組みへ直します。滞留の原因が発注の過多なら、発注点と発注量の見直しが要ります。予測の外れが原因なら、予測の精度か、外れた場合の余裕の持ち方を見直します。発注点と発注量の決め方は発注点と発注量の決め方に、在庫全体の考え方は在庫は“減らせばいい”わけじゃないにまとめています。

動きの少ない品目を選別する考え方はABC分析で在庫を3つに分けたあと、何をするのかが参考になります。入り口を止めても、すでにある滞留在庫は減りません。ステップ1から3を終えてから、取りかかってください。

一段深く:評価損は、出口を決める判断の後ろにある

処分の判断が遅れる理由に、評価損の計上を避けたいという気持ちがあります。企業会計基準では、通常の販売目的で持つ棚卸資産は、期末の正味売却価額が取得原価より下がっていれば、正味売却価額まで簿価を切り下げ、差額を当期の費用にします。企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」の考え方です。正味売却価額は、売価から、見積りの追加の製造原価と販売直接経費を引いた額です。

営業の循環から外れて滞留している在庫は、正味売却価額の見積りが難しい場合があり、その場合は処分見込価額まで切り下げる方法や、一定の回転期間を超えたものを規則的に切り下げる方法が、基準で示されています。つまり、売れない在庫を持ち続けても、損は先送りにならず、いずれ帳簿に出てきます。損を先に認識して出口を決めたほうが、資金と場所を早く取り戻せます。

税金の扱いは、会計とは別の定めです。評価損を税務上の損金にできる場合は限られていて、過剰生産で値が下がっただけでは、原則として認められないとされています。ただし、税務上の評価方法に低価法を選んでいる会社は、時価の下落が評価額に反映されるため、扱いが変わります。具体的な処理は会社の状況で変わるので、必ず顧問の税理士などの専門家に相談してください。

よくある質問

Q. 何か月動かなければ、滞留在庫とみなすのですか。

A. 一律の決まりはありません。会計の基準でも、一定の回転期間を超えたものを規則的に切り下げる方法が示されているだけで、期間は会社が決めます。商品の寿命に合わせて決め、毎月同じ物差しで測ってください。

Q. 安く売ると、通常の販売が崩れませんか。

A. 売り方を分ければ防げます。通常の販売ルートとは別の窓口や期間を決めて、通常の価格を見せない形にします。どの在庫から出すかを、ルールにしておくことが大切です。

Q. 在庫を減らしすぎて、欠品になりませんか。

A. 動かない在庫を減らしても、よく動く品目の在庫は減りません。欠品のリスクは、入り口を絞るときに起きるので、発注点を品目ごとに見直しながら進めます。

まとめ

過剰在庫は、見つけて、原因を分け、出口を決め、判断のルールを作ってから、入り口を止める、という順番で減らします。出口は転用・返品・値引き販売・廃棄の4種類で、最も大きな壁は、誰が決めるかが決まっていないことです。まずは、最後の出庫から6か月以上動いていない在庫の金額を、出してみてください。

滞留在庫の見える化や、発注の仕組みの見直しを整理したい方は、お問い合わせからお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

小林悠真(こばやし・ゆうま)/LF&L株式会社 代表取締役。九州大学で音響設計・音楽マネジメントを学びデザイン思考を培った後、ヤマトシステム開発・バンテックで物流/生産管理、ラクスル等のITスタートアップで事業開発・SCM構築を経験。製造業・物流業のDXコンサルタントとして、現場の1歩から経営システムまでの全体最適を支援する。テューバ奏者・LFコンサート代表理事も兼務。

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