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ABC分析で在庫を3つに分けたあと、何をするのか|Aランクだけ管理しても減らない理由

ABC分析で在庫を3つに分けたあと、何をするのか|Aランクだけ管理しても減らない理由

在庫を金額の大きい順に並べ、累積の構成比で線を引いて、A・B・Cの3つに分けます。ここまでは多くの会社でやっています。そして「Aランクが重要だから、Aを重点管理しましょう」で話が終わります。半年後に在庫金額を見てもほとんど動いていない——そんな場面を、私は製造業や卸の現場で何度も見てきました。

結論から言うと、在庫金額を押し上げているのは、たいていAランクではなくCランクのほうです。金額の大きいAは目立つぶん誰もが気にしていて、回転も速く、意外に滞留しません。1点ずつは安いのに種類だけが多く、誰も見ていない品目。そこに死蔵が溜まります。

まず1分だけ:ABC分析は何を見ている分析なのか

ABC分析は、品目を重要度の順に並べ替えて階層に分ける考え方です。在庫管理では年間の出庫金額や在庫金額を品目ごとに出し、大きい順に並べて、上から累積の構成比を計算します。その累積が一定の割合に達したところで線を引き、Aランク・Bランク・Cランクと名前を付けます。

切り方としては、累積70%までをA、90%までをB、残りをCとする置き方がよく紹介されます。ただし、この数字は法則でも標準でもありません。品目数が数百の会社と数万の会社では、同じ70%で切っても管理すべき品目数がまるで違います。線は「自分たちが手をかけられる品目数はどこまでか」という運用の都合から決めるもので、教科書の数字に合わせるものではない、と私は考えています。

よく「パレートの法則で、売上の8割は2割の品目が作る」と説明されます。傾向としてその形になることは多いのですが、自社のデータで必ず8対2になるとは限りません。まず自社の累積曲線を描いてみて、どれくらいの角度で寝ているかを見てください。その角度こそが、線を引く位置を決める材料になります。

Aランクだけ締めても総在庫が減らない理由

Aランクの品目は、放っておいても関心が集まります。金額が大きいので発注のたびに稟議が要り、欠品すれば売上に直結するので営業も製造も見ています。結果として、発注のサイクルは短く、1回あたりの発注量は必要最小限に寄っていきます。つまりAは、管理を強める前からすでにそこそこ回っている、というのが現場の実感です。

問題はCランクのほうです。1点あたりが安いので、発注のときに「どうせ安いから多めに」という判断が通ってしまいます。そこに最小ロットやまとめ買いの単価差が乗ると、数か月ぶん、ときには数年ぶんの数量が一度に入ってきます。1品目では小さな金額でも、品目数が数千に及べば合計は無視できません。在庫金額は「単価の大きさ」ではなく「単価×数量×品目数」で決まります。

もうひとつ、Cには誰も見ていないという性質があります。動きが少ないので発注の場面に登場せず、棚卸のときだけ数えられて、また1年眠ります。設計変更で使われなくなった部品、終売した商品の付属品、旧仕様のラベル。こうしたものは「減らそう」という意思決定の対象にすら上がりません。在庫を減らす取り組みが空振りするときは、たいてい対象の選び方がAに偏っています。

ここは在庫は“減らせばいい”わけじゃないとも地続きの話です。総量を叩くのではなく、どの層が何の理由で積み上がっているのかを分けて見ます。そのための道具がABC分析であって、Aに管理資源を集めるためだけの道具ではありません。

A・B・Cの分け方と、管理の仕方の違い

3つのランクは、分ける基準も、かける管理の手間も、抱えるリスクの性質も違います。同じ「在庫を持ちすぎない」という言葉でも、AとCでは意味するところが正反対になります。

Aランク

Bランク

Cランク

分ける基準

年間出庫金額の累積が上位(例:累積70%まで)

Aに続く中位層(例:累積90%まで)

残り全部。品目数としては最も多い

管理の頻度と方法

週次以上で在庫と需要を確認。定期発注で必要量だけ引き当てる

月次で見直し。発注点と発注量を決めて半自動で回す

個別管理をしない。発注点だけ置いて、年1回は品目そのものを棚卸す

抱えるリスクの性質

金額インパクトが大きい。欠品すると売上が止まり、持ちすぎると資金を縛る

欠品と滞留の両方が起こりうる。担当者が替わると管理が抜けやすい

1点ずつは小さいが、種類が多く滞留しても気づかれない。陳腐化・死蔵の温床

表の右端に注目してください。Cランクの管理方針は「丁寧に管理する」ではありません。1品目ずつに手をかけていたら管理コストのほうが在庫金額を超えてしまいます。Cに対して必要なのは、管理を細かくすることではなく、持つ品目そのものを減らすことです。

金額だけで切らない:出荷頻度と掛け合わせる

ABC分析の弱点は、軸が金額ひとつしかないところにあります。年に1回しか出ない高額品と、毎日出ていく高額品が、同じAランクに同居してしまうのです。前者は在庫として置いておくと資金を長期間縛りますが、金額基準では「重要だから手厚く持とう」という結論に流れがちになります。

そこで、出荷頻度や需要の安定性でもう一本軸を立てます。出方が安定している品目、波はあるが読める品目、ほとんど動かない品目。この見方はXYZ分析と呼ばれることもあります。金額のABCと掛け合わせて9つのマスにすると、「高額なのに、ほとんど動かない」という一番危ない層が一目で浮かび上がります。在庫金額の割に売上への貢献が小さく、しかも読みにくいので安全在庫も置きにくい、という三重苦の層です。

頻度の軸を持つと、安全在庫の置き方も変わります。動きの読める品目は統計的に置けますが、年に数回しか動かない品目に同じ計算式を当てても意味のある数字は出ません。この分け方については安全在庫の決め方|勘に頼らず数字で置く4ステップで詳しく書いています。ランク分けは、置き方の判断をどこで変えるかの線引きでもあるのです。

もうひとつ、ランク分けの結果は在庫回転率とは?計算方法と読み方と必ず突き合わせてください。全社の回転率は平均値なので、Aの速さがCの遅さを覆い隠します。ランク別に回転率を出すと、平均では見えなかった差が数字として出てきます。

一段深く:Cランクの出口は、発注管理ではなく品目マスタの整理

ここからが、現場に入っていちばん時間を使う話です。Cランクを減らすと言うと、多くの会社でまず「発注を止める」という対策が出てきます。しかし発注を止めても、マスタに品目が生きている限り、誰かが必要になった瞬間にまた発注されます。そして最小ロットの制約は変わらないので、また数年ぶんが入ってきます。

実際に効くのは、品目そのものを統廃合することです。ある卸の現場で品目一覧を出してもらったら、同じ用途のねじが仕様違いで何種類も登録されていました。発注元の部署や登録した時期、取引先の呼び方が違っただけでした。統合して1種類に寄せれば、在庫は品目数ぶん減り、置き場も棚卸の工数も一緒に減ります。

つまりABC分析の出口は、在庫管理の改善ではなく、品目マスタの設計に着地します。これは購買だけでは決められません。代替品に寄せてよいかは設計が判断し、終売品の付属品を切ってよいかは営業が判断します。在庫の話に見えて、実際は「何を売り、何を作り続けるか」という事業の意思決定の話になります。ABC分析が経営の会話に上がるべき理由は、ここにあります。

倉庫の側から見ても同じことが言えます。品目が多いということは、ロケーションが増え、歩く距離が伸び、間違えやすくなるということです。システムで管理すれば楽になるように見えますが、WMSとは?在庫管理システムとの違いで書いたとおり、仕組みは品目の多さそのものを減らしてはくれません。減らす判断だけは、人が設計として下す必要があります。

よくある質問

Q. ABC分析は何の金額で並べるのが正しいですか。

A. 目的によって変わります。管理の優先順位を決めたいなら年間の出庫金額(単価×年間出庫数)で並べるのが一般的です。一方、滞留在庫を洗い出したいなら、いま棚にある在庫金額で並べたほうが実態に近づきます。両方を出して、出庫金額ではCなのに在庫金額ではAに来る品目を探すと、死蔵の候補がはっきり見えてきます。

Q. 分析はどれくらいの頻度でやり直せばいいですか。

A. 年1回では粗すぎ、毎月では手間が勝ちます。多くの現場では四半期から半期に一度で足ります。ただし、新製品の投入や取引先の入れ替えがあった直後は、ランクの入れ替わりが大きいので臨時で見直してください。ランクが動いたのに管理方法が前のままだと、Aに落ちた品目が欠品し、Cに落ちた品目が積み上がります。

Q. Cランクを減らすと、いざというときに欠品しませんか。

A. その心配は当然です。だからこそ、減らす対象は「動かない品目」ではなく「なくても代わりが利く品目」で選びます。年に数回しか出なくても、それがないと納品できない部品は残します。逆に、同等品が別の品番で在庫されているものは、統合の候補です。判断の軸を出荷頻度から代替可能性に移すと、安全側に倒しながら品目数を減らせます。

まとめ

ABC分析は、Aランクを見つけるための道具であると同時に、誰も見ていないCランクを可視化するための道具です。Aはもともと注目されているので、そこを締め直しても総在庫はあまり動きません。動かしたいなら、単価が小さく種類の多い層に目を向けることになります。そしてその出口は、発注のやり方ではなく、品目マスタをどう設計するかという話につながります。

次に在庫データを開くときは、金額の上位だけでなく、いちばん下の層が何品目あるかを数えてみてください。そこに、動かせる余地が眠っていることが多いはずです。在庫と品目マスタの整理でお困りの際は、お問い合わせからご相談ください。

この記事を書いた人

小林悠真(こばやし・ゆうま)/LF&L株式会社 代表取締役。九州大学で音響設計・音楽マネジメントを学びデザイン思考を培った後、ヤマトシステム開発・バンテックで物流/生産管理、ラクスル等のITスタートアップで事業開発・SCM構築を経験。製造業・物流業のDXコンサルタントとして、現場の1歩から経営システムまでの全体最適を支援する。テューバ奏者・LFコンサート代表理事も兼務。

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