発注点と発注量の決め方|定量発注と定期発注の使い分け

「発注のタイミングと数量は、担当者の勘と経験で決めています」——そう聞くと、属人化した現場だと思われるかもしれません。でも実際には、多くの会社がこの状態で回っています。むしろ問題は勘に頼っていることそのものではなく、「いつ頼むか」と「いくつ頼むか」を、同じ一つの判断として扱っていることにあります。
物流・生産管理の現場を見てきた立場から言うと、この二つは本来、別の設計問題です。発注点はタイミングを決める仕組み、発注量は数量を決める仕組み。混ぜて考えるほど、在庫は過剰にも欠品にも振れやすくなります。
発注点と発注量:まず1分だけ
発注点とは、「在庫がここまで減ったら発注する」という残数のラインです。発注量とは、「一度にいくつ発注するか」という数量です。前者は「いつ」、後者は「いくつ」。この二つを一つの表に整理すると、どちらの方式が向いているかが見えてきます。
定量発注方式と定期発注方式、決め方が根本から違う
発注の仕組みは大きく二つに分かれます。定量発注方式(発注点方式)と定期発注方式です。名前は似ていますが、発注のトリガーも、担当者が毎回考えることも、まったく別物です。
品目を仕分ける軸は三つあります。動きの速さ(出庫頻度)、単価、そして調達リードタイムの長さと安定度です。動きが速く単価が低く、リードタイムも短くて読みやすい品目は、発注点方式で機械的に回すのが向いています。逆に、動きが遅く単価が高く、リードタイムが長い、あるいは仕入先の都合で読みにくい品目は、周期ごとに需要を見直せる定期発注方式のほうが安全です。品目を一つずつこの三つの軸に当てはめていくと、どちらの方式が向くかは、感覚ではなく仕分けの結果として見えてきます。
定量発注方式(発注点方式):在庫が線を割ったら、決まった量を頼む
在庫がある水準(発注点)を割り込んだ瞬間に、あらかじめ決めた一定量を発注します。発注点は「調達リードタイム中に出ていく数量+安全在庫」で組み立てるのが基本で、安全在庫の考え方は在庫最適化の本当の意味で詳しく触れています。発注のタイミングは在庫の減り方次第で不定期になりますが、発注量自体は毎回同じロット数で固定されるので、担当者が都度考えることは「発注点を割ったかどうか」の一点だけです。
向くのは、出庫頻度が高く、単価が比較的低く、需要が読みやすい品目。いわゆる定番品です。ただしこの方式は在庫数を常に把握できている前提で成り立ちます。バーコードや在庫管理システムで残数を常時監視できていないと、発注点を割ったことに気づけません。
在庫管理システムを入れる前の現場では、ダブルビン(2ビン)方式という簡易な工夫もよく使われます。同じ部品を二つの棚(ビン)に分けて置き、片方が空になったらそれが発注の合図、もう片方を使っている間に補充する、という仕組みです。ねじや消耗部材のような小さな定番品なら、これだけで発注点方式の考え方をシステムなしで再現できます。
定期発注方式:決まった周期で、必要な分だけ頼む
こちらは発注のタイミングを先に固定します。週に一度、月に一度といった周期で在庫を確認し、目標在庫水準に届くまでの不足分を、そのつど計算して発注します。発注のタイミングは固定、発注量は毎回変わる——定量発注方式とは、決める順番が逆になります。
向くのは、単価が高く在庫として抱えるコストが重い品目、需要の波が大きく都度見直したい品目、同じ仕入先からまとめて調達してロットを揃えたい品目です。加えて、調達リードタイムが長く、そのつどの需要見立てを反映しにくい品目にも向いています。ただし毎回、需要の見立てと在庫確認という判断が要るので、発注点方式に比べて担当者の工数はかかります。
観点 | 定量発注方式(発注点方式) | 定期発注方式 |
|---|---|---|
発注のタイミング | 在庫が発注点を割った時点(不定期) | あらかじめ決めた周期(定期) |
発注量 | 固定(毎回同じロット数) | 変動(目標在庫水準までの不足分) |
決めるパラメータ | 発注点・発注量(ロットサイズ)・安全在庫 | 発注サイクル・目標在庫水準・安全在庫 |
向く品目 | 動きが速い・単価が低め・需要が安定した定番品 | 単価が高い・動きが遅い・需要変動が大きい品目 |
運用の手間 | 在庫を常時監視する仕組みが前提。判断は「割ったか否か」のみ | 監視は軽いが、毎回の需要見立てに工数がかかる |
この向き不向きは、倉庫の中の置き場所の考え方ともつながっています。出庫頻度で品目をABC分析し、動きの速いAランク品を入口近くの一等地に置く——という発想は倉庫レイアウトとピッキング動線の考え方と根っこが同じです。動きの速い品目は発注点方式で細かく回転させながら置き場所も近くに寄せ、動きの遅い品目は定期発注でまとめて調達しながら置き場所も奥に回します。発注方式と置き場所の設計は、本来セットで考えるものです。
一段深く:発注ルールも「目的から設計しなおす」
ここでデザイン思考の出番です。デザイン思考とは、今あるやり方をいったん脇に置き、そもそも何のためにその管理をしているのかから考え直す姿勢のこと。発注ルールに当てはめるなら、「この品目を管理する目的は何か」を先に問い直すということです。
生産管理の現場では、発注方式を品目ごとに分けず、全品目に同じルールを一律で当てはめている会社を何度も見てきました。定番品も、たまにしか動かない品目も、同じ発注点・同じ周期で回している状態です。すると、動きの遅い品目ほど、実際の消費ペースより多めに、しかも長い周期で発注され続け、気づいたときには過剰在庫になっています。困るのは、動きが遅いからこそ在庫がゆっくり積み上がり、月次の在庫表では見えにくいことです。棚卸や倉庫が手狭になったタイミングで、初めて問題として表面化します。
この構造を崩す設計は難しくありません。まず品目を出庫頻度で分け、速い品目には発注点方式、遅い品目には定期発注方式(あるいは定期発注ですらなく都度確認)を当てます。品目の性格に合わせて発注のルール自体を作り直すだけで、動きの遅い品目に眠っていた過剰在庫は表に出やすくなります。どちらの方式でも、需要をどう見立てるかが根っこにあります。この点は需要予測は何から始めるのかでも扱っています。
よくある質問
Q. 二つの方式は品目ごとに混ぜて使ってよいか
A. むしろ混ぜるのが基本です。全品目を一つの方式で管理する必要はありません。出庫頻度や単価でランク分けし、ランクごとに発注方式を割り当てるのが実務的です。
Q. 発注点はどうやって計算するか
A. 基本の考え方は「調達リードタイム中に出ていく数量+安全在庫」です。出庫のペースが安定していればシンプルに計算できますが、ばらつきが大きい品目ほど安全在庫の見積もりが重要になります。
まとめ
発注点は「いつ頼むか」、発注量は「いくつ頼むか」。この二つは、別の設計問題です。全品目を同じルールで管理しなくていいのです。まずは品目を出庫頻度で分けるところから始めてみてください。動きの速い品目には発注点方式、動きの遅い品目には定期発注方式。それだけで、過剰在庫と欠品の両方が、静かに減っていきます。
発注方式の設計や在庫の見直しについては、お問い合わせからご相談ください。
この記事を書いた人
小林悠真(こばやし・ゆうま)/LF&L株式会社 代表取締役。九州大学で音響設計・音楽マネジメントを学びデザイン思考を培った後、ヤマトシステム開発・バンテックで物流/生産管理、ラクスル等のITスタートアップで事業開発・SCM構築を経験。製造業・物流業のDXコンサルタントとして、現場の1歩から経営システムまでの全体最適を支援する。テューバ奏者・LFコンサート代表理事も兼務。