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人時生産性はどう測るのか|売上ではなく粗利で見る理由

人時生産性はどう測るのか|売上ではなく粗利で見る理由

生産性を測ろう、という話は現場でよく出ます。そして多くの会社が、売上を人数で割った数字を見ます。前年より増えていれば良し、減っていれば「もっと効率を上げろ」。この会話に、ずっと居心地の悪さを感じてきました。

理由は単純です。売上を人数で割った数字は、自社が生んだ価値ではなく、仕入や外注の金額まで一緒に測ってしまっているからです。

まず1分だけ:人時生産性とは何か

人時生産性とは、投入した労働時間1時間あたりでどれだけの成果を生んだかを表す指標です。「人時」は「にんじ」と読み、人数ではなく時間を分母に置くところに意味があります。人数で割ると、残業の多い職場と定時で帰る職場が同じ扱いになってしまうからです。

そして分子には、売上ではなく粗利(売上総利益)を置きます。売上から、材料費や仕入、外注費といった社外に出ていく金額を引いたあとの金額です。ここに置く数字を何にするかで、指標の意味が根本から変わります。

分子を売上にすると、何が生産性に化けるのか

たとえば、ある工程を内製から外注に切り替えたとします。作業時間は社内から消えますが、売上は変わりません。分子が売上のままだと、分母の時間だけが減るので、数字は上がります。現場は何も変えていないのに、生産性が改善したように見えるのです。

逆の場合も起きます。材料の仕入単価が上がり、その分を価格に転嫁できたとしましょう。売上は増えますが、労働時間は変わりません。売上基準の生産性は上がりますが、社内に残る金額は一円も増えていません。外注比率や仕入単価の変動が、そのまま生産性の変化に化けてしまうわけです。

分子を粗利にすると、この二つの錯覚が消えます。外注に出せば外注費が引かれるので粗利は減り、時間だけが減った効果と相殺されます。仕入単価が上がれば粗利は圧縮され、数字は素直に下を向きます。残るのは、自分たちの時間が生んだ価値そのものです。粗利と限界利益は近いようで中身が違うので、自社の定義は限界利益と粗利は何が違うのかで先に揃えておくことをおすすめします。

測って使えるようにする5つの手順

定義を決めずに集計を始めると、数字が部署ごとに割れます。私が支援先で踏む順序は次のとおりです。

  1. 分子を粗利に決める:売上から材料費・仕入・外注費を引いた金額を使うと定め、どの費目を引くかを一覧にして文書に残します。
  2. 分母の労働時間の範囲を決める:残業を含めるか、パート・アルバイトを実働時間で足すか、生産管理や事務といった間接部門を含めるか。ここが最も割れるので、含める・含めないを明記します。
  3. 集計の単位を決める:まず全社で一本。そのうえで工程別・ライン別に分けるかを決めます。最初から細かく割ると、集計が続かず三か月で止まります。
  4. 自社の現在値を置く:直近12か月を同じ定義で計算し、月ごとの推移を基準にします。他社の平均値を探しに行くより、自社の過去と比べるほうが打ち手に直結します。
  5. 改善の打ち手と結びつける:数字が動いたときに、何をしたから動いたのかを記録します。ここを繋がないまま数字だけ掲示すると、現場では「また指標が増えた」で終わります。

難所は二番目です。間接部門を含めれば会社全体の実力に近づきますが、現場の改善努力が薄まって見えます。含めなければ現場の動きは映りますが、間接部門が膨らんでも数字に出ません。どちらを選んでも構わないので、選んだ理由を書き残し、途中で定義を変えないことのほうが大切です。

一段深く:上げ方は「速く働く」だけではありません

ここが、現場と経営でいちばん食い違うところです。人時生産性の数字を掲示した途端、現場は「もっと速く動け」という要求として受け取ります。けれど分数の形をよく見ると、上げ方は三つあります。分母を減らす、分子を増やす、そして分数に乗る仕事そのものを選び直す、です。

一つめが「速く働く」に当たります。ただしこれは、すでに手を動かし続けている現場では伸びしろが小さく、無理を通せば品質と定着率が先に壊れます。二つめは単価を上げる方向で、値上げだけでなく、粗利率の高い仕事の構成比を上げることも含みます。同じ時間を使うなら、残る金額が大きい仕事に使うほうが数字は動きます。

三つめが、私がいちばん効くと考えているものです。そもそも要らない作業を無くすこと。二重に作っている帳票、誰も見ない日報、念のための確認。これらは速くしても、無くしたときほどには数字が動きません。手を付ける順番を「速くする」から始めない考え方は、効率化は“早くやる”ことじゃないで書いたとおりです。

三方向あることを経営の側が理解しているかどうかで、この指標は道具にも凶器にもなります。現場に「もっと速く」だけを求める使い方をすると、数字は動かないまま信頼だけが減ります。逆に、仕事の構成や不要作業の棚卸しまで含めて話せるなら、人時生産性は現場と経営の共通言語になります。製品ごとにどれだけ残っているかを掴む話は、赤字商品はどうやって見つけるのかと地続きです。

よくある質問

Q. 粗利ではなく付加価値で測るべきだという話も聞きます。

A. どちらも使われています。付加価値のほうが理論的には筋が通りますが、計算に人件費や減価償却費の扱いが絡み、中小企業が毎月自力で出すには手間がかかります。粗利であれば試算表からすぐ取れるので、続けられる形として私は粗利から始めることをおすすめしています。運用が定着してから精緻化しても遅くありません。

Q. 目標値はどれくらいに置けばよいですか。

A. 業種や工程の構成で大きく変わるため、一般的な水準を当てはめても判断には使えません。自社の直近12か月の実績を基準に置き、そこから何パーセント動いたかで見るほうが確実です。外部の統計を参照する場合は、集計の定義が自社と同じかを必ず確認してください。定義が違う数字と比べると、良し悪しの判断そのものが狂います。

Q. 事務や間接部門の生産性も同じように測れますか。

A. 同じ式で測ることはできますが、意味の読み方は変わります。間接部門は直接の粗利を生まないため、数字の上下がその部門の努力を映すとは限りません。部門ごとの評価に使うより、会社全体の指標として置き、内訳の変化を見る材料にするほうが実務に合います。

まとめ

人時生産性は、売上ではなく粗利で測ってください。分子を売上にしたままでは、外注比率や仕入単価の変動が生産性の変化として映り、自分たちの働きを見誤ります。分子を粗利に決め、分母の労働時間の範囲を決め、集計の単位を決め、自社の現在値を置き、打ち手と結びます。この五つを通して初めて、使える数字になります。

そして上げ方は三方向あることを、掲示する前に共有してください。「もっと速く」だけを求める使い方をしないことです。指標の定義づくりや、現場と経営で同じ数字を見る仕組みづくりでお困りの方は、お問い合わせからお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

小林悠真(こばやし・ゆうま)/LF&L株式会社 代表取締役。九州大学で音響設計・音楽マネジメントを学びデザイン思考を培った後、ヤマトシステム開発・バンテックで物流/生産管理、ラクスル等のITスタートアップで事業開発・SCM構築を経験。製造業・物流業のDXコンサルタントとして、現場の1歩から経営システムまでの全体最適を支援する。テューバ奏者・LFコンサート代表理事も兼務。

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