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コラム製造現場のリデザイン

管理図はどう読むのか|異常の判定ルールと、Cpkを出してよい工程の見分け方

管理図はどう読むのか|異常の判定ルールと、Cpkを出してよい工程の見分け方

Cpkを計算したら、なぜか前回と大きく違う値が出ました。測り方を変えたわけでもないのに、数字が日によって動きます。こうした工程で、Cpkを報告書に載せてよいのでしょうか。

答えを先に言うと、載せてよいのは「安定していると確かめられた工程」だけです。その確かめに使う道具が管理図で、点が管理限界の外に出る、片側に連続して並ぶ、といった判定ルールで、工程が異常かどうかを見分けます。

管理図とは:まず1分だけ

管理図は、測定値を時間の順に点で打ち、中心線と、その上下に引いた2本の管理限界線を重ねたグラフです。中心線は平均、上方管理限界(UCL)と下方管理限界(LCL)は、ふつう中心線から標準偏差の3倍だけ離れた位置に置きます。

管理限界は、規格の上下限とは別のものです。規格は顧客や設計が決める「許される範囲」で、管理限界は工程の実力から計算される「いつもの範囲」です。この区別が曖昧なまま使うと、管理図が正しく読めなくなります。

管理図を使う4つの手順

手順

やること

注意点

1. 時間順にデータを取る

ロットや時間帯の順番を保ってデータを並べる

並べ替えない・まとめ取りしない

2. 中心線と管理限界を計算する

平均と、ばらつきから限界線を計算する

異常な点が混ざった状態で引かない

3. 点を打ち、判定ルールで見る

下の表のルールに当てはまる点がないかを確認する

1つでも当てはまれば原因を調べる

4. 安定を確かめてから、能力を計算する

異常が消えて安定したら、Cpkなどを求める

安定していない間は、能力の数字を出さない

手順1と2:時間順に取り、限界線を引く

管理図の命は、時間の順番です。データを集めたあとに並べ替えたり、日ごとにまとめて平均だけを取ったりすると、時間の中で起きた変化が消えてしまいます。測った順に、そのまま打っていきます。

測定値を1つずつ打つ管理図(個々の値の管理図)では、隣り合う測定値の差(移動範囲)の平均を使って、管理限界を計算するのが一般的です。中心線に、移動範囲の平均の2.66倍を足し引きした位置が、管理限界になります。1回に複数個を測ってその平均を打つ管理図では、群ごとの平均とばらつきから、専用の係数表を使って限界を計算します。

限界を引くときの注意点は、異常な点が混ざったデータで計算しないことです。最初に引いた線の外に点が出ていて、原因が明らかな場合は、その点を除いて引き直します。外れた点をそのまま計算に入れると、限界が広がり、異常を見逃す線になってしまいます。

手順3:異常を判定する4つのルール

点が管理限界の外に出ることは、最も基本的な異常のサインです。ただ、それだけを見ていると、限界の内側で起きている変化を見落とします。そこで、点の並び方のクセを見つける判定ルールが使われます。代表的な4つのルールを、表にまとめます。

ルール

異常と判定する並び方

疑う原因の例

1. 限界の外

1点が管理限界(中心線から3σ)の外に出る

突発的な条件変化、設備の異常、測定ミス

2. 連(れん)

中心線の同じ側に、点が続けて並ぶ(7〜9点の流儀がある)

平均値の移動、工具の摩耗、段取りのずれ

3. 傾向

点が続けて上がり続ける、または下がり続ける(6〜7点の流儀がある)

摩耗の進行、温度のドリフト

4. 2σ付近への偏り

連続する3点のうち2点が、同じ側の2σの外に出る

ばらつきの増大、材料ロットの混在

ルールの点数は、どの規格や流儀を使うかで異なります。大切なのは、使うルールを自社で1つに決めて、運用を揃えることです。点数を状況に合わせて変えると、異常の定義がぶれて、現場が混乱します。

これらのルールに当てはまる点が見つかったら、まず測定の誤りがないかを確かめ、次に、その時点で何が変わったかを現場で調べます。段取り替え、材料ロットの交換、作業者の交代、工具の交換などが、よくある引き金です。原因が分かれば除去し、分からなければ記録して様子を見ます。

手順4:安定を確かめてから、Cpkを計算する

管理図に異常がなくなり、点が限界の内側でランダムに散らばっている状態を、管理状態(安定した状態)と呼びます。この状態になって初めて、工程能力指数のCpkが「これから作るものの見込み」として意味を持ちます。理由は、能力の数字が、過去のデータの平均とばらつきから計算されるため、工程が変わり続けていれば、将来を予測できないからです。

Cpkの読み方、CpとCpkの違い、不良率との結びつけ方は工程能力(Cp・Cpk)はどう読むのかにまとめてあります。この記事は、その前提となる「Cpkを出してよい工程か」の見分け方にあたります。

見分けの条件を整理すると、次の3点です。管理図で異常の判定がなく、安定していること。データが時間順に、十分な数だけ取れていること。分布が極端に偏っていないこと(不良率への換算では正規分布が仮定されます)。この3つを満たさない状態で出したCpkは、参考値として扱い、報告には安定を確認したあとの数字を使います。

一段深く:管理限界を、規格に合わせて動かさない

現場で起きやすい誤解が、管理限界を規格の幅に合わせてしまうことです。「規格は±0.1だから、管理限界も±0.1にしておこう」と決めると、管理図は異常を知らせる役割を失います。規格の中に収まっていても、工程の実力が変わっている兆しは、実力から計算した管理限界でしか捉えられません。

もう1つの誤解は、管理限界の外に出た点を、すぐ不良品として扱うことです。管理限界の外に出ることと、規格の外に出ることは、まったく別の事柄です。限界の外に出ても規格の中なら、製品は合格ですが、工程に何か起きた合図として原因を調べる価値があります。逆に、管理限界の中でも、規格の外に出る製品があるなら、工程の実力そのものが規格に足りていません。

立ち上がりの段階では、段取り替えの直後に点が片側へずれる、という形がよく見られます。この場合は、段取り後の初品の確認や、調整の手順を見直すと、連のルールに当たる頻度が下がります。段取りを短くする考え方は段取り替えの時間はどう縮めるのかで扱っています。

よくある質問

Q. 管理図は、何個のデータから作れますか。

A. 必要な数は、取り方や管理図の種類によって変わるため、一律の正解はありません。ただし、少ないデータで引いた限界は不安定なので、まず暫定の線として運用し、データが貯まったら引き直す方法が実務的です。引き直しのたびに、異常な点が混ざっていないかを確かめてください。

Q. 管理限界の外に点が出たら、ラインを止めるべきですか。

A. 止めるかどうかは、製品の特性、顧客への影響、原因の見当がつくかどうかで決めます。まず測定の誤りがないかを確認し、その点の前後で条件が変わっていないかを調べてください。止める基準は、事前に決めておくと、現場の判断が揃います。

Q. 管理図とヒストグラムは、どう使い分けますか。

A. ヒストグラムは、データ全体の分布の形を見る道具で、時間の情報は持ちません。管理図は、時間の流れの中での変化を見る道具です。両方使うと、「分布の山がどこにあるか」と「それが時間とともに動いていないか」の両方を確かめられます。

まとめ

管理図は、測定値を時間順に打ち、中心線と3σの管理限界を引いて、異常を見つける道具です。限界の外、連、傾向、2σ付近への偏りといった判定ルールで異常を見分け、工程が安定していると確かめてから、Cpkを計算します。管理限界は規格とは別物で、規格に合わせて動かさないことが、使いこなしの要点です。

自社の工程の安定の確認や、管理図の導入でお困りの方は、お問い合わせからお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

小林悠真(こばやし・ゆうま)/LF&L株式会社 代表取締役。九州大学で音響設計・音楽マネジメントを学びデザイン思考を培った後、ヤマトシステム開発・バンテックで物流/生産管理、ラクスル等のITスタートアップで事業開発・SCM構築を経験。製造業・物流業のDXコンサルタントとして、現場の1歩から経営システムまでの全体最適を支援する。テューバ奏者・LFコンサート代表理事も兼務。

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