LF&L株式会社
コラム製造現場のリデザイン

工程能力(Cp・Cpk)はどう読むのか|不良率と結びつける見方

工程能力(Cp・Cpk)はどう読むのか|不良率と結びつける見方

「Cpkが基準に届かないのは、設備が古いのだから仕方がない」——工程能力の数字を前に、そう結論づけていませんか。検査データを集計し、指標を出し、届かないから設備更新の見積を取ります。製造業の現場を支援していると、この流れを何度も見かけます。

ただ、数字の内訳を開いてみると、景色が変わることがあります。Cpkが低い原因は、ばらつきが大きいことよりも、狙いの中心が規格の真ん中からずれていることのほうが多いのです。ずれは条件の振り直しで詰められる余地があり、設備を替えずに数字が動くことがあります。

工程能力とは:まず1分だけ

工程能力とは、その工程が図面の規格に対してどれだけ余裕を持って作れているかを表す指標です。上限と下限で決まる規格の幅に対して、実際の出来ばえのばらつきがどれくらいの大きさかを比べます。代表的な指標がCpとCpkの2つです。

Cpは、規格の幅を工程のばらつき(標準偏差の6倍)で割った値です。定義からわかるとおり、Cpが1.00のときは規格の幅がちょうどばらつき6つぶんに一致します。つまり規格の上下端が、平均からおよそ3標準偏差の位置に来ている状態です。Cpkはここに「狙いの中心が規格の中心からどれだけずれているか」を織り込み、規格の近いほうの片側だけを見て評価します。

CpとCpkは、何を見ている指標なのか

Cp

Cpk

見ているもの

ばらつきの大きさだけ

ばらつきの大きさ+中心のズレ

規格の中心からのズレ

織り込まない

織り込む(近いほうの片側で評価)

計算の骨格

規格の幅 ÷ ばらつき6つぶん

規格の近い側までの距離 ÷ ばらつき3つぶん

同じ値でも違う現場の状態

中心がどこにあっても値は変わらない

中心が寄るほど値が下がる

下がっているときの疑い先

ばらつきそのもの(設備・材料・測定)

まず狙いの設定値(条件・段取り・工具摩耗)

表の一番上の行が、2つの指標のいちばんの分かれ目です。Cpは分布の“幅”しか見ていないので、製品が規格の右端に寄り固まっていても、ばらつきさえ小さければ高い値が出ます。Cpkはその寄りを減点します。だからこそ、CpとCpkの差そのものが「中心がどれだけずれているか」を語る情報になります。

現場で読むときのコツは、片方だけを見ないことです。Cpが十分あるのにCpkだけが低ければ、ばらつきは足りていて、狙いが片側に寄っている状態を疑えます。両方とも低ければ、ばらつきそのものが規格に対して大きい可能性が高くなります。同じ「Cpkが低い」でも、手を付ける場所が正反対になります。

Cpkが低い=設備が悪い、とは限らない

私が現場で最初に確認するのは、実測値のヒストグラムと規格の位置関係です。分布の山が規格の中心にあるのか、それとも片側の限界線に寄りかかっているのか。寄っているなら、原因は設備の精度ではなく、狙いの設定値のほうにあります。

寄りが生まれる理由は、たいてい現場の合理的な判断の積み重ねです。たとえば削りすぎると手直しがきかない加工では、作業者が安全側に寄せて仕上げることがあります。工具が摩耗するにつれて寸法が一方向へ動く工程では、交換直後と交換直前で狙いが違ってきます。どれも不注意ではなく、うまくやろうとした結果です。

この場合、条件を振り直して山を規格の真ん中へ寄せるだけで、ばらつきが同じままでもCpkは上がります。設備投資を検討するのは、中心を合わせてもなおCpが足りないと確かめてからで遅くありません。順番を逆にすると、直る問題に対して大きな買い物をしてしまいます。稼働率の見方と同じで、ひとつの数字を単独で読むと、打ち手を取り違えます。

不良率と結びつけるときの作法

工程能力が経営の言葉になるのは、不良率と結びついたときです。規格の外に出る割合が読めれば、選別や手直しの工数、客先クレームのリスクを金額の議論に乗せられます。ただし、この換算には前提があります。

指標から不良率を見積もるには、測定値が特定の分布(一般には正規分布)に従うと仮定する必要があります。実際の工程では、工具摩耗による片寄り、2台の設備の混在、選別で外れ値を除いた履歴などによって、分布は素直な釣鐘型から崩れます。崩れた分布に正規分布の換算表を当てると、見積もりは実態から離れます。

ですから、換算値を社内で共有するときは「正規分布を仮定した場合の概算」と言い添えるのが誠実です。そのうえで、実際の不良実績と突き合わせて、ずれの大きさを確かめます。数字が合わないときに疑うべきは現場ではなく、仮定のほうです。現場のデータ入力が続かない理由と同じく、数字は集め方と前提で姿を変えます。

一段深く:安定していない工程では、Cpkは将来を予測しない

工程能力には、意外と語られない前提があります。それは「工程が安定していること」です。工程能力の指標は、過去に取ったデータのばらつきと中心から計算します。その計算結果を「これから作るものも同じように出来る」と読むためには、工程が同じ状態を保ち続けると言えなければなりません。

安定していない工程とは、日によって、あるいはロットによって、ばらつきや中心そのものが動いてしまう工程です。午前と午後で寸法が動く、材料のロットが変わると山の位置が移る、担当者が替わると分布が変わります。こうした工程でひと月ぶんのデータをまとめてCpkを出すと、動いていた複数の状態が1つの山に混ざった、実在しない分布の指標が出てきます。

だから順番があります。まず管理図などで、時間の流れに沿って中心とばらつきが落ち着いているかを確かめます。落ち着いていると言えて初めて、工程能力の数字が「将来の見込み」として意味を持ちます。安定を確認する前に計算した数字は、過去の記述にはなっても、予測にはなりません。

この順番は、生産全体の設計とも重なります。工程能力を上げる取り組みは、検査を厳しくすることではなく、条件が動く要因を先に減らすことです。工具交換の間隔、材料の受け入れ条件、段取り後の初品確認。生産計画の立て方で順番を設計するのと同じように、まず「ばらつきの原因が動かない状態」を作ってから測る、という順番が効きます。

よくある質問

Q. Cpkは1.33あれば合格ですか

A. 1.33は一つの目安として広く語られる値ですが、どこでも通用する合格ラインではありません。要求される水準は、業種、製品の安全性、顧客との取り決めによって変わります。顧客から指定がある場合はそれが基準になりますし、社内で決める場合も、特性の重要度ごとに水準を分けるのが実務的です。まずは自社の主要顧客が何を求めているかを確認してください。

Q. CpとCpkはどちらを管理指標にすべきですか

A. 報告に使うならCpk、改善の診断に使うなら両方を並べる、という使い分けをおすすめします。Cpkは中心のズレを含むので、実際の出来ばえに近い評価になります。一方でCp単独の値がわからないと、ばらつきを小さくすべきなのか、狙いを動かすべきなのかが判断できません。2つ並べて初めて、打ち手が決まります。

Q. データは何個くらい集めれば計算できますか

A. 必要な数は求める精度によって変わるので、一律の正解はありません。ただし、少ないデータから出した値は大きく振れるという点は共通します。それ以上に大事なのは、その期間に工程が安定していたかどうかです。数を集めるために期間を伸ばすと、条件の違う状態が混ざりやすくなります。個数と期間はセットで考えてください。

まとめ

Cpは規格の幅とばらつきだけを比べた指標で、中心のズレを見ていません。Cpkはそのズレを織り込むので、両方を並べると「ばらつきが大きいのか、狙いがずれているのか」が読み分けられます。Cpkが低いという一点だけで設備の話に進む前に、分布の山がどこにあるかを確かめてみてください。

そして、数字を将来の見込みとして使うなら、工程が安定しているかを先に確認します。安定を確かめてから測り、中心を合わせてからばらつきに手を付けます。この順番を守るだけで、工程能力は報告のための数字から、判断の材料に変わります。

自社の工程能力の読み方や、改善の順番を整理したい方は、お問い合わせからお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

小林悠真(こばやし・ゆうま)/LF&L株式会社 代表取締役。九州大学で音響設計・音楽マネジメントを学びデザイン思考を培った後、ヤマトシステム開発・バンテックで物流/生産管理、ラクスル等のITスタートアップで事業開発・SCM構築を経験。製造業・物流業のDXコンサルタントとして、現場の1歩から経営システムまでの全体最適を支援する。テューバ奏者・LFコンサート代表理事も兼務。

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