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コラム物流・SCMのリデザイン

棚番はどう振ればいいのか|ロケーション管理を設計する4ステップ

棚番はどう振ればいいのか|ロケーション管理を設計する4ステップ

棚に番号を貼り、図面にその番号を書き込みます。棚番の設計と聞くと、その程度の作業に見えます。実際、新しい倉庫を借りたときや棚を増やしたときに、手が空いている人がまとめて振ってしまう会社は少なくありません。

ところが現場を見に行くと、様子が違います。棚番の振り方は、ピッキングの人がどの順番でどこを歩くかを、そのまま決めてしまいます。番号は住所であると同時に、作業の順序そのものだからです。

ロケーション管理とは:まず1分だけ

ロケーション管理とは、倉庫の中のどこに何を置いているかを、決まった記号で管理する仕組みです。その記号が棚番であり、一般にはエリア・列・段・間口といった単位を組み合わせて表します。たとえば「A-03-2-05」なら、Aエリアの3列目、2段目、左から5番目の間口、といった読み方になります。

目的は2つあります。探す時間をなくすことと、誰がやっても同じ場所にたどり着けるようにすることです。ベテランの頭の中にしか置き場所が無い状態を、記号として外に出す作業だと考えると近いです。

棚番を設計する4ステップ

  1. 桁の意味を決めます。エリア・列・段・間口のどこまでを番号に持たせるかを先に決め、区切り文字と桁数を固定します。途中で桁を増やすと、過去の帳票も現場の記憶も一度に使えなくなります。
  2. 固定ロケーションと自由ロケーションのどちらを基準にするかを決めます。品目ごとに置き場所を決め打ちするか、空いている棚に入れて記録で追うか、という方針の選択です。倉庫全体をどちらかに寄せる必要はなく、エリア単位で使い分けても構いません。
  3. 出荷頻度に応じて置き場所を割り当てます。よく出る品目を出荷口に近い低い段へ、動きの少ない品目を奥や上段へ寄せます。ここで初めて、棚番と歩く順序が結びつきます。
  4. 棚卸しと実地のズレを直す運用を決めます。誰が、どの頻度で、何を突き合わせ、差が出たときにどう直すかまで決めて、ようやく設計が運用に載ります。

4つのうち、後から取り返しがつきにくいのは1番目です。そして現場の成果をいちばん左右するのが3番目になります。

固定ロケーションと自由ロケーション、どちらを基準にするか

固定ロケーションは、この品目はこの棚、と決めてしまう方式です。覚えやすく、紙の管理表でも回り、ハンディ端末が無くても運用できます。弱点は空き棚が増えることです。在庫が少ない時期でもその棚は他の品目に使えませんので、倉庫全体の充填率は下がります。

自由ロケーションは、空いている棚に入れて、どこに入れたかをシステムで記録する方式です。充填率は上がり、季節で在庫量が大きく動く品目にも耐えます。ただし記録が唯一の手がかりになりますので、入庫と出庫のたびに棚番を正しく登録する仕組みが要ります。ここを人の記憶や後追いの入力でごまかすと、探し物が一気に増えます。WMSの役割についてはWMSとは?在庫管理システムとの違いで整理しています。

実務では、動きの速い定番品は固定、季節品や入れ替わりの激しい品目は自由、という折衷が現実的です。全社で一つの方式に統一することより、区画ごとに理由を説明できることのほうが大事だと私は考えています。

桁の意味と、後から棚を増やしたときの破綻

棚番は、桁を意味で区切ると人が読めるようになります。先頭がエリア、次が列、その次が段、と決まっていれば、番号を見ただけでおおよその位置が浮かびます。新人が迷わずたどり着ける、という利点は小さくありません。

その反面、意味を持たせた番号は、物理的な変更に弱くなります。たとえば3列目と4列目の間に棚を1本足したいとき、意味どおりに振るなら以降の列番号を全部ずらすことになります。現実にはそれができませんので、3列目の隣に別の記号を割り込ませる運用が生まれ、規則が少しずつ崩れていきます。

完全な解はありませんが、先に決めておけることはあります。増設が想定される方向には桁を空けておきます。そして番号は連番にせず、飛び番を許す形にしておきます。この2つを最初に合意しておくだけで、数年後の破綻の仕方がかなり穏やかになります。

棚番は番地、動線は経路

棚番の設計は、倉庫レイアウトの設計と対になっています。レイアウトが通路の形と歩く経路を決めるのに対し、棚番はその経路上の番地を決めます。どちらか一方だけを整えても、歩く距離は思ったほど縮みません。

わかりやすいのは、番号の並びと歩く向きが食い違っているときです。ピッキングリストは棚番の昇順で出力されるのに、その順に歩くと通路を何度も往復することになります。こうなると作業者は自分の勘でリストを並べ替えて歩きますので、教育もしにくく、人によって所要時間が変わります。番号の並びと歩く順序を一致させておくことが、地味ですが効きます。経路そのものの作り方は倉庫レイアウトとピッキング動線で扱っていますので、あちらを経路、こちらを番地として読むと噛み合います。

置き場所の割り当てを決めるとき、出荷頻度の高い順に並べる考え方が基本になります。ただし在庫量そのものを絞る話とは別問題です。頻度で置き場所を最適化しても、そもそも動かない在庫が場所を占めていれば効果は限られます(在庫は“減らせばいい”わけじゃない)。

一段深く:棚番を変えるコストは、貼り替えではありません

棚番を見直しましょうという話になると、真っ先に心配されるのはラベルの貼り替えです。枚数が多い、印刷が面倒だ、休日に一気にやるしかない、という声が出ます。たしかに手間はかかりますが、私の見るかぎり、本当のコストはそこではありません。

費用のほとんどは、現場の人の記憶と手癖を書き換えることに掛かります。何年も同じ棚から取ってきた人は、番号ではなく身体で場所を覚えています。棚番が変われば、その記憶がすべて誤りに変わります。切り替えた直後は、ラベルは正しいのに作業が遅くなり、しかも取り違えが増えるという時期が必ず来ます。

ですから移行は、一斉ではなく区画ごとに進めます。一つのエリアを切り替え、そこで出た混乱と教訓を吸収してから次へ動きます。旧番号と新番号の対応表を現場に貼り、当面は両方を読めるようにしておきます。伝票や過去の帳票に旧番号が残る期間も見込んでおきます。このやり方は切り替え完了までの期間が延びますが、止まらずに済みます。

私はここを、目的から設計しなおすべき地点だと考えています。棚番は倉庫の設備ではなく、人の作業手順を記号にしたものです。ならば設計の評価軸は、番号のきれいさではなく、初めて来た人がリストの順に歩けるかどうかに置くべきです。そして移行計画は、ラベルの枚数ではなく、覚え直す人の数で見積もるのが実態に合っています。

よくある質問

Q. 小さな倉庫でも棚番は必要ですか。

A. 面積が小さくても、扱う品目が多ければ有効です。判断の目安は広さではなく、置き場所を知っている人が何人いるかです。特定の人がいないと探せない状態であれば、規模にかかわらず記号として外に出す価値があります。棚数が少ないうちに始めるほうが、移行の負担も軽く済みます。

Q. 棚番はシステムに登録しないと意味がありませんか。

A. 固定ロケーションであれば、紙の一覧表と現物のラベルだけでも運用できます。システムが不可欠になるのは自由ロケーションを選んだときで、置いた場所の記録がシステムにしか残らないためです。方式の選択と、システムを入れるかどうかの判断は、必ずセットで考えてください。

Q. 出荷頻度はどのくらいの期間で見直せばいいですか。

A. 決まった正解はありませんが、季節性のある商材なら年に数回、定番中心なら年1回程度を目安に実績を取り直す会社が多いです。重要なのは頻度そのものより、見直しの担当と時期をあらかじめ決めておくことです。決めていないと、置き場所は最初に振ったまま固定され、扱う品目だけが入れ替わっていきます。

まとめ

棚番は倉庫の住所ですが、同時にピッキングの歩く順序を決める設計図でもあります。桁の意味を決め、固定と自由のどちらを基準にするかを選び、出荷頻度で置き場所を割り当て、ズレを直す運用まで決めます。この4つが揃って初めて、番号が現場で機能します。

一度に倉庫全体を作り直す必要はありません。まずは出荷の多い一区画だけ、リストの順に歩けているかを実際について歩いて確かめてみてください。そこで見つかる往復が、棚番設計の出発点になります。倉庫の設計を一緒に整理したい方はお問い合わせからご相談ください。

この記事を書いた人

小林悠真(こばやし・ゆうま)/LF&L株式会社 代表取締役。九州大学で音響設計・音楽マネジメントを学びデザイン思考を培った後、ヤマトシステム開発・バンテックで物流/生産管理、ラクスル等のITスタートアップで事業開発・SCM構築を経験。製造業・物流業のDXコンサルタントとして、現場の1歩から経営システムまでの全体最適を支援する。テューバ奏者・LFコンサート代表理事も兼務。

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