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リードタイムはどこからどこまでを指すのか|社内と顧客で違う数え方

リードタイムはどこからどこまでを指すのか|社内と顧客で違う数え方

「リードタイムを短くしよう」——会議でそう決まった瞬間、営業と工場長と物流担当が、それぞれ違う数字を思い浮かべていることがあります。営業は「受注から納品まで40日」、工場長は「うちの製造だけなら5日」、物流は「出荷指示が来てから3日」。誰も嘘はついていません。全員が、自分の持ち場の“正しい”リードタイムを答えています。ただ、同じ言葉で違う区間を指しているだけです。

物流・生産管理の実務とSCM構築の両方を見てきた立場から言うと、この噛み合わなさこそが、リードタイム短縮の議論が前に進まない大きな理由です。短くしたいのはどの区間か、誰も確認しないまま「短縮」だけが目標になりがちです。まずは区間を揃えるところから、一緒に見ていきましょう。

リードタイムとは、まず一言で

リードタイムとは、ある起点からモノや仕事が完了するまでにかかる時間のことです。製造業なら「発注してから納品されるまで」、物流なら「出荷指示から到着まで」を指すのが一般的とされます。ここまでは辞書的な説明で足ります。問題は、この“起点”と“完了”をどこに置くかが、社内・営業・顧客でバラバラなことです。

リードタイムは「どこから、どこまで」で別物になる

同じ社内でも、数え方は三つ同時に存在しています。社内(製造)は、製造に着手してから完成するまでを数えます。段取り待ちや在庫の有無は含みません。営業は、注文を受けてから出荷するまでを数えます。ここには社内承認や資材待ちが含まれます。

顧客は、注文を送ってから手元に届くまでを数えます。配送や着荷確認まで、すべてがリードタイムです。

会議で「リードタイムを2週間短縮する」と決めても、誰の数え方を基準にするかが決まっていないと、製造は自分の持ち場だけを削り、営業は社内承認の遅さに気づかず、顧客の体感はほとんど変わらない、ということが起きます。三つの数え方がすれ違ったまま議論が進むケースは、決して珍しくありません。

区間に分けて数えてみる

三つの数え方の違いを解消する近道は、リードタイムを一本の線として扱うのをやめ、区間に分解することです。区間ごとに「誰が管理しているか」「実際に何が起きているか」を並べると、どこが長いのかが見えてきます。

区間

誰が管理しているか

実際に何が起きているか

受注・与信確認

営業・営業事務

入力自体は数十分でも、社内承認や在庫引当の順番待ちで数日かかる

資材・部材の調達

購買

発注は即日でも、仕入先の生産枠が空くまで動けない

製造・加工

製造・工場長

正味の加工時間は短いが、他ロットの後ろに並ぶ順番待ちが乗る

検査・出荷準備

品質管理・物流

検査結果や梱包資材の到着を待つ時間が発生しやすい

配送

物流会社

積み合わせや配送ルートの都合で、出荷後もすぐには届かない

この表を営業・製造・物流の三者で一緒に埋めるだけで、「短縮を議論すべきはどこか」がはっきりします。多くの場合、詰まっているのは作業そのものではなく、区間と区間のつなぎ目です。

ここでよくあるつまずきが、どれか一つの区間だけを縮めて満足してしまうことです。たとえば製造を2日短縮できても、検査待ちや配送待ちがそのまま残っていれば、顧客が体感するリードタイムはほとんど変わりません。区間表は、どこを削れば全体に効くのかを見極めるための地図でもあります。

短縮すべきは「作業」より「待ち」

区間ごとに時間を測ってみると、実際に手が動いている時間、つまり加工・梱包・入力といった正味の作業時間は、リードタイム全体の中で意外と短いことが多い、というのが私の見方です。長いのはむしろ、次の工程に回るのを待つ時間や、情報が届くのを待つ時間です。受注情報が製造に伝わるまでの間、検査結果が出るまでの間、配送の順番が回ってくるまでの間。どれも“何かをしている”時間ではなく、“待っている”時間です。

この待ち時間は、放っておくとそのまま在庫や特急対応というかたちで表に出ます。次の工程がいつ来るか分からないから、多めに部材を持っておきます。検査がいつ終わるか読めないから、出荷予定日を長めに見積もっておきます。結果として、安全在庫の決め方を考えるときも、本当は「待ち時間の不確実性をどこまで吸収するか」という設計の話になっているのに、経験と勘で在庫量を決めてしまいがちです。

在庫が増えれば、当然ながら在庫回転率とは?計算方法と読み方で見るような回転の数字も悪化します。待ち時間を測らずに在庫だけを削ろうとすると、今度は欠品が増えます。リードタイムの内訳を見ないまま、在庫と欠品の間で綱引きを続けているのが、多くの現場の実情だと感じます。

一段深く:短縮の打ち手をどこに置くか

リードタイム短縮というと、「作業を速くする」ことだと思われがちです。設備を増やす、人を増やす、手順を効率化する——そういった発想です。もちろん効果はありますが、区間の内訳を見ると、正味作業時間を削っても全体はさほど縮みません。効くのは、待ちそのものを設計し直すこと——次の工程に情報が届くタイミングを早める、検査の順番待ちを減らす、配送の締め切りに合わせて出荷を組む、といった“つなぎ目”の設計です。

区間ごとに実際の時間を測ってみると、手が動いている時間より、次の工程を待っている時間や情報が届くのを待っている時間の方が長いというケースに、しばしば出会います。短縮の打ち手を「作業を速くする」側にばかり置くのではなく、「待ちを消す」側に置き直すことです。区間を分けて測れば、誰でも確認できる構造です。

優先すべきは、区間表の中でいちばん「待ち」が長く、かつ他の区間にも影響している一点です。すべての区間を同時に直そうとせず、まずそこだけに手をつけてみてください。全体に波及する結節点は、たいてい一つか二つに絞り込めます。

この“つなぎ目を設計する”という発想は、部門をまたいだ情報の流れ全体を見る話でもあります。SCMは“大企業だけのもの”じゃないで書いたとおり、これは大掛かりなシステム投資の前に、まず流れを見えるようにするところから始められます。リードタイムの区間分解は、その最初の一歩とも言えます。

よくある質問

Q. リードタイムとサイクルタイムは同じ意味ですか?

A. 厳密には違います。サイクルタイムは、ひとつの工程で1個を作るのにかかる時間を指すことが多く、リードタイムはそれを含む、より広い区間全体の時間を指します。会議で数字がずれるときは、この二つを取り違えていないかも確認してみてください。

Q. リードタイムを測るとき、起点と終点はどこに置けばいいですか?

A. 決まった正解はありません。社内の改善が目的なら受注や着手を起点に、顧客体験の改善が目的なら注文の瞬間を起点にするのが基本です。大事なのは、誰向けの数字かを最初に決めてから測ることです。

まとめ

リードタイムという言葉は、社内・営業・顧客のあいだで、同じ会議室の中でも指している区間が違います。まず区間ごとに分けて、誰が管理していて、実際に何が起きているかを並べてみます。すると多くの場合、詰まっているのは作業ではなく、区間と区間のつなぎ目にある待ち時間だと分かります。

全部の区間を一度に見直す必要はありません。まずは自社のリードタイムを区間表に落とし込むところから始めてみてください。区間の洗い出しや、待ち時間の設計については、お問い合わせからご相談いただけます。

この記事を書いた人

小林悠真(こばやし・ゆうま)/LF&L株式会社 代表取締役。九州大学で音響設計・音楽マネジメントを学びデザイン思考を培った後、ヤマトシステム開発・バンテックで物流/生産管理、ラクスル等のITスタートアップで事業開発・SCM構築を経験。製造業・物流業のDXコンサルタントとして、現場の1歩から経営システムまでの全体最適を支援する。テューバ奏者・LFコンサート代表理事も兼務。

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