BPRとは?“ただの業務改善”じゃない|違いをコンサル目線で

「業務改善を頑張っているのに、なぜか成果が薄い」——そう感じたことはありませんか。承認フローを簡略化した、Excelの入力項目を減らした、会議を1つ削った。どれも間違ってはいません。でも半年後に振り返ると、別の場所に同じような無駄がまた生まれています。私はこの光景を、物流や製造の現場支援で何度も見てきました。
結論から言うと、それは「業務改善」と「BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング=業務プロセス再構築)」を混同していることが原因であることが多いです。
BPRとは? ― まず1分だけ
BPRとは、既存の業務プロセスを部分的に直すのではなく、「そもそも何を実現したいのか」という目的に立ち返り、業務の流れ・組織・システムを根本から設計しなおす手法です。1990年代に米国のマイケル・ハマーとジェイムズ・チャンピーが提唱した概念で、原著のタイトルは“Reengineering the Corporation”(邦題『リエンジニアリング革命』)。彼らが強調したのは「今ある仕事の手順を前提に効率化するな。仕事そのものの前提を疑え」という点でした。
「ただの業務改善」との違い ― 私が現場でいちばん誤解される点
ここが本題です。業務改善とBPRは、見た目の作業が似ているせいで、よく同じもの扱いされます。でも狙っている射程がまるで違います。
業務改善は、今ある業務プロセスを前提に、その中のムダ・ムラ・ムリを削る活動です。承認者を3人から2人に減らす、入力項目を10個から7個にする、紙の帳票をPDFにします。どれも大事な仕事で、私も現場でよく提案します。ただしこれは「部分最適」です。プロセスの骨格そのものは変えていません。
一方でBPRは、「そのプロセスは、そもそも何のために存在するのか」から問い直します。承認を2人に減らすのではなく、「なぜこの案件に承認が要るのか」「承認そのものをなくせないか」を検討します。入力項目を減らすのではなく、「この情報はどこかの部署がすでに持っていないか」「二重入力そのものをなくせないか」を考えます。ゴールが「今のやり方を速くする」ではなく、「そもそもの目的から作り直す」に変わるのです。
具体的な場面で説明します。ある製造業の支援現場で、受注入力に1件あたり15分かかっているという相談を受けたことがあります。業務改善的な発想なら「入力画面を使いやすくして10分に短縮しよう」となります。でも私がまず聞いたのは、「その受注データは、最終的に誰が・何のために使っているのか」でした。調べてみると、営業が受けた注文情報を、製造管理・在庫管理・請求の3部署がそれぞれ別のフォーマットで再入力していました。つまり同じ情報を3回作り直していました。ここでBPRの発想が働きます——「入力を速くする」のではなく、「そもそも再入力という工程自体をなくせないか」。受注データを一度だけ正しく入力し、そこから3部署が同じ情報を参照する形に組み替えれば、15分の入力を10分にする改善ではなく、3部署ぶんの再入力そのものが消えます。効果の桁が変わるのは、ここです。
ハマーとチャンピーが原著で使った有名な言い方に「Don't automate, obliterate(自動化するな、消し去れ)」があります。ムダな工程をコンピュータで速くするのではなく、その工程自体が要るのかを先に疑え、という意味です。この一文が、業務改善とBPRを分ける最も端的な線引きだと私は考えています。
一段深く ― なぜ「目的から設計しなおす」発想が要るのか
ここには、デザイン思考に通じる考え方があります。デザイン思考とは、目の前の制約や既存のやり方を前提にせず、「本当に解決したい課題は何か」から発想し直す考え方です。業務改善は「今ある形」を起点に置きます。BPRは「本来の目的」を起点に置きます。この起点の違いが、成果の桁を変えます。
私が物流・製造の現場を見てきて感じるのは、多くの非効率が「昔そうだったから」「担当者が変わるのが怖いから」という理由だけで存続している、ということです。誰も悪意なく、まじめに今のやり方を守っています。でも「なぜこの手順があるのか」を最後に問い直したのがいつか、誰も覚えていないことがよくあります。BPRはこの「問い直し」を、意図的に・定期的に行う仕組みです。
ただし誤解してほしくないのは、BPRが「常に大掛かりな全社改革」を意味するわけではないという点です。対象は全社の基幹プロセスのこともあれば、受注〜出荷という一連の流れだけのこともあります。範囲の大小より、「前提を疑って目的から組み直したか」という発想の質がBPRかどうかを決めます。逆に言えば、業務改善を否定する必要もありません。小さな改善を積み重ねながら、節目節目で「そもそもこの工程は要るか」と問い直す——両方を使い分けるのが、現実的な進め方だと私は考えています。
BPRと業務改善、どちらを選ぶか
業務改善 | BPR | |
|---|---|---|
起点 | 今のプロセスを前提にする | そもそもの目的から問い直す |
対象 | 個別の作業・工程 | プロセス全体・組織の役割分担 |
効果 | 短縮・軽減(部分最適) | 工程そのものの消滅・再構築(全体最適) |
向く場面 | すぐ手をつけられる小さな無駄 | 同じ非効率が繰り返し起きる構造的な問題 |
目安はシンプルです。「この作業を速くしたい」で止まるなら業務改善。「この作業、そもそもなぜあるのか」まで踏み込むならBPRです。
よくある質問
Q. BPRとDX(デジタルトランスフォーメーション)は同じもの?
A. 違います。BPRは「業務プロセスを目的から設計しなおす」という考え方・手法であり、システムの有無を問いません。DXはデジタル技術を使って事業や業務のあり方を変えることを指します。BPRで業務の目的とあるべき流れを整理したうえで、その実現手段としてデジタル技術を使うのがDX、という順番で捉えると整理しやすくなります。順番を逆にして「先にシステムを入れてから業務を合わせる」と、古いプロセスをそのままデジタル化するだけになりがちです。
Q. 中小企業でもBPRはできる?
A. できます。むしろ人手が限られる中小企業ほど、同じ情報の二重入力・不要な承認・目的が形骸化した工程を残す余裕がありません。全社改革である必要はなく、「受注から出荷まで」のように範囲を絞って、目的から問い直すところから始められます。
まとめ
BPRは、業務改善の延長線上にある「もっと頑張る改善」ではありません。今あるプロセスを前提にせず、そもそもの目的から設計しなおす、発想そのものが違う取り組みです。すべての工程を一度にBPRの対象にする必要はありません。まずは「この作業、そもそも何のためにあるのだったか」と、ひとつだけ問い直してみてください。そこから、業務改善では届かない景色が見えてきます。
自社の業務プロセスがBPRの対象かどうか整理したい方は、BPR・業務改善のご支援やお問い合わせからお気軽にご相談ください。
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この記事を書いた人
小林悠真(こばやし・ゆうま)/LF&L株式会社 代表取締役。九州大学で音響設計・音楽マネジメントを学びデザイン思考を培った後、ヤマトシステム開発・バンテックで物流/生産管理、ラクスル等のITスタートアップで事業開発・SCM構築を経験。製造業・物流業のDXコンサルタントとして、現場の1歩から経営システムまでの全体最適を支援する。テューバ奏者・LFコンサート代表理事も兼務。