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コラム

SCMは“大企業だけのもの”じゃない|中小企業のサプライチェーン構築

SCMは“大企業だけのもの”じゃない|中小企業のサプライチェーン構築

「SCM(サプライチェーンマネジメント)は大企業がやること」——そう思っていませんか。専用の統合システムに何千万円もかけ、専任部署を置いて回す、あの大掛かりな仕組み。従業員数十名の会社にそんな体力はない、と話を聞く前から線を引いてしまう経営者を、私は何人も見てきました。

物流の現場で生産管理を担い、そのあとITスタートアップで事業のサプライチェーン構築に携わってきた立場から言わせてください。SCMは規模で線引きされるものではありません。むしろ、人もお金も限られた中小企業ほど、SCMの発想が効きます。大企業は多少のムダを在庫や人員で吸収できますが、中小企業は一つの欠品、一回の特急便のコストが、そのまま月次の利益を削ります。

SCM(サプライチェーンマネジメント)とは?:まず1分だけ

SCMとは、調達 → 生産 → 物流 → 販売という、モノがお客さまに届くまでの一連の流れを、「情報の流れ」でつないで全体を最適化する取り組みです。各部門がそれぞれ頑張る「部分最適」から、鎖(チェーン)全体で最適を目指す考え方へ。物流は、このチェーンを実際に動かす実行部隊の一つに過ぎません。SCMはもっと手前(調達の発注点や生産の段取りまで含めた)、情報の設計です。

“大企業の大掛かりな仕組み”ではなく、“つながりの設計”の話

SCMというと、いきなり高価な統合システムを思い浮かべがちです。でも本質は、システムではなく「つながりの設計」にあります。

よくある場面を挙げます。営業が受けた注文が、担当者のExcelや頭の中だけにあって、製造にすぐ伝わりません。製造は自分たちの段取りの都合で作り、できたものを物流が慌てて捌きます。すると何が起きるでしょうか。片方の倉庫では在庫が山になり、別の得意先では欠品して、営業が「なんとかして」と特急便を頼みます。——それぞれの部署は、まじめに、正しく頑張っています。なのに全体では損をしています。私が現場でいちばんよく見てきたのは、この光景でした。

じつはこの発想、自動車産業が磨いてきた「かんばん」の思想と表裏です。トヨタ生産方式のかんばんは、モノを先に動かすのではなく、「必要な情報を先に流し、モノは後から必要な分だけ動かす」仕組みでした。中小企業のSCM構築も、根っこは同じです。高価なシステムを入れる前に、まず情報の順番を変えます。それだけで、在庫の山と欠品の谷は目に見えて小さくなります。

ABC分析で、どこから手をつけるかを決める

全アイテムを同じ精度で管理しようとすると、必ず息切れします。私が現場でまず使うのはABC分析(出荷金額や出荷頻度の高い順に品目をA・B・Cにランク分けする手法)です。売上や欠品インパクトの大きいAランク品目だけ、まず情報の流れを整えます。Cランクの多品種少量品まで一度に手を広げないのが、続けられるコツです。

SCM構築の手順:どこから着手するか

大きな仕組みを入れる前に、私が必ずやる順番は決まっています。

  1. 流れを一枚の紙にする:受注から出荷まで、モノと情報が「どこで・誰から誰へ」動くかを書き出します。書いている途中で「あれ、ここで情報が止まっている」という場所が、たいてい見つかります。
  2. いちばん詰まる一点を選ぶ:全部を一度に直そうとはしません。ABC分析のAランク品目や、特急便が頻発する取引先など、「ここが流れると全体がぐっと楽になる」結節点を一つだけ選びます。
  3. 情報を先につなぐ:受発注・在庫・需要の情報を、部門をまたいで見えるようにします。共有スプレッドシート一枚でも構いません。道具の検討は、この流れが固まってからです。
  4. 小さく試す:一部門・一取引先だけでパイロット運用します。うまくいかない部分を洗い出してから、対象を広げます。
  5. 仕組み(システム)は最後に検討する:情報の流れ方が固まったあとで、それを速く正確にする道具として選びます。

私が見てきた失敗の多くは、この順番が逆になったケースです。流れが整理されないまま高価なシステムだけ先に入れ、「デジタル化した」つもりで終わります。データは入力されても、部門をまたいで見られていなければ、紙の運用と実質は変わりません。順番を守るだけで、成功率はまるで違ってきます。

一段深く:“SCM構築”を目的から設計しなおす

SCM構築の目的は、システムを入れることではありません。「情報が滞りなく流れること」です。この一点に立ち返ると、優先順位ががらりと変わります。私はこれを、「現場の1歩の動きから、経営システムまでの全体最適」だと考えています。順番は、いつも現場の流れが先。立派な仕組みは、その流れを速く・正確にするために後から乗せるものです。

2024年、働き方改革関連法によるドライバーの時間外労働の上限規制が施行され、物流の担い手が急に限られるようになりました。「2024年問題」と呼ばれるこの変化は、運べる量そのものが有限になったことを意味します。運べる枠が有限になれば、なおさら「何を、いつ、どれだけ動かすか」を情報で先に決めておく設計力が問われます。SCMは、運送会社だけの課題ではありません。

突き詰めると、中小企業がぶつかる壁はほとんどの場合ひとつです。部門と部門、自社と取引先のあいだの“分断”。営業は欠品が怖くて多めに構え、製造は段取りを優先し、物流はそのしわ寄せを受けます。互いの事情が見えないまま、それぞれが最善を尽くすほど、全体では歪みが大きくなります。だからSCMの第一歩は、大げさな改革ではありません。「隣の部門の数字が見える」——ただそれだけで、驚くほど景色が変わります。相手が何に困っているかが分かれば、人は自然と歩み寄れるからです。

分断された状態と、つながった状態の違い

言葉だけだと抽象的なので、現場でよく見る三つの領域を並べてみます。どちらも「同じ会社の中」で起きている違いです。

領域

分断されている状態

つながっている状態

受注情報

営業担当のExcelや記憶にとどまる

受注時点で製造・物流が同じ数字を見られる

在庫の把握

棚を見に行くまで正確な数がわからない

Aランク品目だけでも在庫数が随時共有されている

欠品対応

気づいた時点で特急便を頼む

発注点を割る前に生産・調達へ知らせが届く

右の列に、大がかりなシステムは登場しません。必要なのは「誰が・いつ・何を見られるようにするか」という設計だけです。ここまで整えてから、初めてシステム導入の検討に入ります。その順番を守ることが、中小企業のSCM構築ではいちばんの近道になります。

よくある質問

Q. SCMとロジスティクス(物流)は同じもの?

A. 物流は「モノを運ぶ・保管する」機能を指し、SCMは調達から販売までを情報でつないで全体最適する、より広い考え方です。物流はSCMの実行を担う一部分、と捉えると整理しやすくなります。

Q. SCM構築にはシステム投資が必須ですか?

A. 必須ではありません。紙とExcel、共有スプレッドシートでも「情報を先につなぐ」設計はできます。まず流れを一枚の紙に書き出し、いちばん詰まる一点を見つけてから、道具は最後に検討してください。

まとめ

SCMは、大企業だけのものではありません。本質は高価なシステムではなく「つながりの設計」です。流れを一枚の紙にし、いちばん詰まる一点から小さく試します。それだけでも、欠品や過剰在庫、無駄な特急対応は目に見えて減っていきます。中小企業でも、今日から始められます。

サプライチェーンの設計や、情報をつなぐ仕組みづくりについては、SCM構築のご支援システム・DX支援お問い合わせからお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

小林悠真(こばやし・ゆうま)/LF&L株式会社 代表取締役。九州大学で音響設計・音楽マネジメントを学びデザイン思考を培った後、ヤマトシステム開発・バンテックで物流/生産管理、ラクスル等のITスタートアップで事業開発・SCM構築を経験。製造業・物流業のDXコンサルタントとして、現場の1歩から経営システムまでの全体最適を支援する。テューバ奏者・LFコンサート代表理事も兼務。

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