BPRは外部に頼むべきか、自社でやるべきか|判断の分かれ目

「BPRって、社内でやるものなんでしょうか。それとも外のコンサルに頼むものなんでしょうか」。相談の最初の数分で、この質問が出ることがよくあります。うちは規模が小さいから自社でやるしかない、あるいは逆に、専門家じゃないと無理だと決めてかかる方も少なくありません。
私は物流・製造の現場を見てきた立場から、この問いに答えます。結論を先に言うと、答えを決めるのは会社の規模ではありません。“何が足りていないか”で、外に頼むべきか自社で進めるべきかがはっきり分かれます。見積書の金額の大小だけで比べて、結局どちらにも決められず止まってしまう会社を、私は何度も見てきました。
BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)そのものの意味は、BPRとはで詳しく書きました。今のやり方を前提にせず、目的から業務プロセスを組み直す取り組みです。ここでは1行だけ押さえて、本題の「誰が進めるか」に入ります。
「規模」で決めると、たいてい判断を誤ります
BPRを外部に頼むかどうかは、従業員数や予算の大小で語られがちです。大きな会社はコンサルを使い、小さな会社は自社でやるしかない、というイメージです。でも私が現場で見てきた限り、これは規模の話ではありません。足りないものが「手(工数)」なのか、「型(進め方)」なのか、「越境の権限」なのかによって、答えは変わります。
たとえば、社員20名程度の製造業でも、生産管理の実務を長く担当してきた人が社内にいれば、足りないのは「手」だけということがあります。逆に、社員200名の会社でも、部門間の利害調整を引き受ける役割が誰にも割り振られていなければ、いちばん足りないのは「権限」です。会社の大きさは、この3つのどれが足りないかをまったく教えてくれません。予算があるからコンサルに頼む、予算がないから自社でやる、という決め方も同じ理由で危ういと感じています。予算の有無は「手」を確保できるかどうかには関わりますが、「型」や「権限」の有無とは、まったく別の話だからです。
足りないもの別に、外部・自社・併用を並べる
この3つを整理すると、次のようになります。
足りないもの | 外部に頼む | 自社でやる | 併用 |
|---|---|---|---|
手(工数) | 向いています。現状把握や資料作成の作業量を丸ごと預けられます | 向いていますが、本業と兼務になり止まりがちです | 洗い出しは外部、実行は自社という分担が効率的です |
型(進め方) | 向いています。他社で使われてきた手順をそのまま持ち込めます | 向いていません。最初の1件目で手探りになり、時間を大きく失います | 最初の1件だけ型を借り、2件目からは自社で回せます |
越境の権限 | 向いていません。外部は最終的に決める側にはなれません | 必須です。部門をまたぐ決定は、社内の経営が引き受けるしかありません | 外部は材料と選択肢を揃え、決めるのは自社という分担だけが成立します |
手が足りないだけなら、外部に頼めば早く進みます。型が足りないなら、進め方そのものを持ち込んでもらう価値があります。この進め方の具体的な手順はBPRの進め方で書いた通り、対象業務を選び、現状を書き出し、あるべき姿を描き、実行に移す、という順序で進みます。外部が入ると、この順序を崩さずに走れるという利点があります。
実務でいちばん多いのは、実は「併用」です。手と型は外部に借り、決める人だけを社内に立てます。私が支援する案件のほとんどは、この組み合わせで進みます。外部にすべて任せる、あるいはすべて自社で抱える、という両極端はむしろ少数です。
でも3つ目の「越境の権限」だけは、性質がまったく違います。ここが今回いちばん伝えたいところです。
頼むなら、何を渡すかも決めておきます
外部に頼むと決めたら、次に詰めるべきは「何を渡し、何を渡さないか」です。ここを曖昧にしたまま契約すると、期待と実際の分担がずれて、後からもめる原因になります。
渡していいのは、現状の業務フローの洗い出し、他社で機能してきた進め方の型、部門間の意見をすり合わせるための場づくりです。ここは経験と手数がものを言う領域なので、外部の力を素直に借りるべきところです。
渡してはいけないのは、部門をまたぐ最終決定と、その決定に対する責任です。ここまで渡してしまうと、外部が去った後に、決定の理由を誰も説明できなくなります。契約の前に、この境界線だけは社内で握っておいてください。ここが曖昧なまま進んだ案件では、後から「どこまでやってもらえるはずだった」の食い違いが表面化し、追加費用の交渉がこじれることがあります。境界線を最初の一文に書いておくだけで、この揉め事はたいてい防げます。
権限だけは、外に出せません
BPRが最終的にぶつかる壁は、たいてい部門と部門の境目にあります。営業の仕事のやり方を変えるとき、製造や物流にも影響が及びます。誰かが「じゃあこちらのやり方に合わせましょう」と決めないと、話は前に進みません。この“決める”という行為だけは、外部のコンサルタントには本質的にできません。
理由は単純です。部門をまたぐ決定には、その先の責任が伴います。人員配置や評価、投資の優先順位にまで影響することもあります。外部のコンサルタントは、その責任を最後まで負う立場にいません。だからこそ、決めるところまでは踏み込めないのです。
ここにも、目的から設計しなおすという発想が効きます。「誰が担当するか」を、大企業はコンサル・中小は自社という慣例で決めるのではなく、目的(何を、いつまでに、誰の責任で決めるか)から逆算して考え直します。そうすると、規模ではなく役割の空白がどこにあるかが見えてきます。
私が支援に入るときも、進め方の設計や現状の可視化はいくらでも手伝いますが、部門をまたぐ決定は必ず社内に戻します。ここを曖昧にしたまま進めると、報告書は立派でも実行段階で止まる、という結末になりがちです。
だから、外部に頼むと決めた後も、社内の誰か1人には、部門をまたいで決める役目を最初から用意しておいてください。これは規模の大小に関係なく、どの会社にも共通します。
よくある質問
Q. 従業員数十名の会社でも、外部に頼んでいいのでしょうか。
A. 構いません。判断材料は規模ではなく、社内に「手」「型」「権限」のどれが足りているかです。手と型が足りず、権限を持つ人が社内にいるなら、むしろ小さな会社ほど外部の型を借りる価値があります。渡すのは作業と型、渡さないのは最終決定、という線引きさえ守れば、規模の大小は障害になりません。
Q. 外部に頼むと、費用の高さで良し悪しが決まりますか。
A. 決まりません。値段の高さと、自社に合う進め方を持っているかどうかは別の話です。この点は経営コンサルの選び方でも詳しく書きました。値段より先に、渡す範囲をどれだけ具体的に詰められるかを見てください。
まとめ
BPRを外部に頼むか自社でやるかは、会社の規模で決めなくて構いません。まず、足りないのが手なのか、型なのか、それとも部門をまたいで決める権限なのかを、社内で書き出してみてください。頼むと決めたら、渡すものと渡さないものを、契約の前に一度言葉にしておいてください。権限だけは外に出せない、という一点さえ押さえておけば、頼み方を間違えることはありません。迷ったら、まず「今回の案件で、部門をまたいで最終的に決めるのは誰か」を1行で書き出すところから始めてみてください。
どこから手をつければよいか迷う場合は、お問い合わせからご相談ください。
この記事を書いた人
小林悠真(こばやし・ゆうま)/LF&L株式会社 代表取締役。九州大学で音響設計・音楽マネジメントを学びデザイン思考を培った後、ヤマトシステム開発・バンテックで物流/生産管理、ラクスル等のITスタートアップで事業開発・SCM構築を経験。製造業・物流業のDXコンサルタントとして、現場の1歩から経営システムまでの全体最適を支援する。テューバ奏者・LFコンサート代表理事も兼務。