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コラム中小企業のシステム選び

RFP(提案依頼書)の書き方|見積が比較できる形にする6項目

RFP(提案依頼書)の書き方|見積が比較できる形にする6項目

「複数の会社に声をかければ、比較できる見積が集まるはず」——そう思っていませんか。実際にやってみると、机の上に並ぶのは金額も範囲もばらばらの見積書ばかりで、どれが高いのか安いのかすら判断できなくなります。しかも各社に「結局どう違うんですか」と聞き返す羽目になり、選定にかけられるはずの時間が、見積の読み解きだけで消えていきます。そんな場面を、私は何度も見てきました。

発注する側・される側の両方を見てきた立場から言うと、原因は営業担当の腕前でも、御社の説明下手でもありません。多くの場合、比較の土台となる書類そのものが無いのです。それがRFP(提案依頼書)です。

RFP(提案依頼書)とは:まず1分だけ

RFPとは、発注する側が「困っていること」「実現したいこと」「守りたい条件」を書面にまとめ、複数の会社に同じ土俵で提案と見積を求めるための資料です。機能を細かく指定する仕様書とは違い、決め切れていない部分があってもかまいません。基幹システム刷新のような大きな案件ほど、最初にこの書類を用意するかどうかで、後の比較のしやすさが大きく変わります。

見積を比較できる形にする6項目

RFPに書くべきことは、突き詰めると6つです。難しい専門書式はいりません。順番に埋めていくだけで、各社が同じ前提で見積を作れるようになります。

  1. 1. 現状と困りごと:今、何に困っているか。誰の、どの作業が、どれくらい滞っているか。
  2. 2. 目的・実現したい状態:システムを入れた後、何がどう変わっていてほしいか。
  3. 3. 対象範囲:どの部門・どの業務までを対象にするか。含めない範囲もあわせて書きます。
  4. 4. 必須条件と守りたい制約:既存システムとの連携、譲れない業務ルールなど、外せない条件。
  5. 5. 前提条件:予算感、稼働時期の希望、社内の体制(誰がどれだけ動けるか)。
  6. 6. 見積の出し方・評価基準:何を軸に比較したいか。初期費用だけで見るのか、保守費や導入後の体制まで含めるのか。

ここで大事なのは、1〜6のどこにも「画面はこう」「機能はこう」という仕様を書く欄が無いことです。仕様まで書き込みたくなる気持ちは分かります。でも早い段階で仕様を固めてしまうと、各社の提案の幅が狭まり、比較どころか似たような提案しか集まらなくなります。RFPで渡すのは答えではなく、問いです。

良い例と悪い例

同じ項目でも、書き方ひとつで各社の解釈がそろうかどうかが変わります。

項目

悪い例

良い例

現状と困りごと

「在庫管理を効率化したい」

「棚卸しに毎月まる2日かかり、集計ミスで欠品が月に数回起きている」

目的・実現したい状態

「最新のシステムにしたい」

「棚卸しを1日以内に終え、欠品をゼロに近づけたい」

対象範囲

範囲を書かない

「対象は本社倉庫のみ。工場の生産管理は含めない」

必須条件

「使いやすいシステムがいい」

「既存の会計システムとデータ連携できること。土日の停止は不可」

前提条件

「予算は相談」

「初期費用は◯◯万円台を想定。稼働は繁忙期前を希望」

評価基準

「一番安いところに頼みたい」

「初期費用・保守費用・導入後のサポート体制の3点で比較したい」

左の列だけを埋めて終える会社を、私はたくさん見てきました。右の列まで書けるかどうかは、技術力ではなく、自分たちの困りごとをどれだけ言語化できているかにかかっています。右の列に共通しているのは、抽象的な希望ではなく、具体的な数字や固有の状況が入っていることです。数字が入るだけで、各社の提案は驚くほど的を絞ったものになります。ここまで書ければ、ERP選定のチェックポイントと照らし合わせて、機能の過不足も判断しやすくなります。

一段深く:見積が比較できないのは、比べ方の問題ではない

デザイン思考の基本は、今あるやり方を前提にせず、目的から設計しなおすことです。RFPも同じで、体裁の整った書類を作ることが目的ではありません。目的は、各社が同じ問いに答える状態をつくることです。

実際に発注側の支援に入った案件で、同じ「基幹システムを刷新したい」という依頼のはずなのに、届いた見積の金額が、安い会社と高い会社とで数倍も開く、という場面に何度も立ち会ってきました。金額だけを並べると「何かおかしい」と感じますが、各社の提案書を読み比べると理由は単純です。ある会社は既存システムとの連携まで見積もり、別の会社はそこを含めていません。ある会社は稼働後1年分の保守費用を織り込み、別の会社は初期費用だけを出しています。前提が違えば、金額が違うのは当然なのです。

つまり、見積の桁がそろわないのは、各社の腕前や誠実さの差ではなく、発注側が「何を比べたいか」を先に決めていなかったことの結果です。RFPを書く作業は、仕様を固める作業というより、自分たちが何に困っていて、何を守りたいのかを、自分たちの言葉で一度棚卸しする作業に近いと感じます。

この棚卸しは、社内の誰か一人がやればいいものでもありません。現場の担当者が感じている困りごとと、経営側が守りたい条件は、たいてい違う場所にあります。両方を1枚のRFPに乗せて初めて、各社は「この会社が本当に解決したいことは何か」を理解した提案を返してこられます。

もう一つ付け加えると、桁の違う見積を前にしたとき、多くの発注者は反射的に「安い方」を選びます。でも前提がそろっていない見積は、値札の色が違うだけで、同じ棚に並んでいるとは限りません。安さで選ぶ前に、まずは前提をそろえます。順番を間違えないことが、結局いちばんの近道です。

よくある質問

Q. RFPと仕様書はどう違いますか。

A. 仕様書は「何を作るか」を細かく指定する書類です。RFPはそれより手前の段階で、「何に困っていて、何を実現したいか」を伝え、提案そのものを求める書類です。仕様まで固まっていなくても作れます。

Q. RFPは自社だけで書けますか。

A. 書けます。ただし、社内の困りごとを言語化する作業は、渦中にいるほど難しくなるものです。「困っていることを一言で」と言われて、すらすら書ける担当者はそう多くありません。書きながら手が止まる箇所こそ、実は一番書くべき核心だったりします。第三者の目を入れたい場合は、経営コンサルの選び方も参考にしてください。

まとめ

RFPに書くべきことは、突き詰めれば「困っていること」と「守りたい条件」の6項目です。仕様を固め切る必要はありません。見積の前提をそろえることさえできれば、比較は驚くほどしやすくなります。まずは、今の困りごとを1枚の紙に書き出すことから始めてみてください。

RFPの作成やシステム選定の進め方について、支援が必要な場合はお問い合わせからご相談ください。

この記事を書いた人

小林悠真(こばやし・ゆうま)/LF&L株式会社 代表取締役。九州大学で音響設計・音楽マネジメントを学びデザイン思考を培った後、ヤマトシステム開発・バンテックで物流/生産管理、ラクスル等のITスタートアップで事業開発・SCM構築を経験。製造業・物流業のDXコンサルタントとして、現場の1歩から経営システムまでの全体最適を支援する。テューバ奏者・LFコンサート代表理事も兼務。

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